限られた土地の中に理想の住まいを実現させるのは至難の業です。平松建築株式会社・代表取締役の平松明展氏の著書『住んでよかった家 理想の暮らしがずっと続く15の空間』(KADOKAWA)より、広いガレージと駐車場、そして二世帯が快適に暮らす居住スペース両立させた事例を紹介します。スペースの有効活用、そして家族全員が満足できる住まいとは? みていきましょう。
ガレージと駐車場が居住エリアを圧迫…限られたスペースを二世帯ファミリーが無駄なく住む「間取り」【工務店社長が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

家づくりで難しい「スペースの有効活用」

総床面積と必要な部屋数だけで考えると、どの部屋も中途半端になってしまうケースがあります。場合によっては活用されない部屋やスペースが生じることも。無駄なスペースがある一方で、目的の場所が窮屈になってしまうのは残念なことですね。スペースを有効活用するには、まず目的に優先順位をつけることです。絶対に譲れない目的を中心に考え、残されたスペースの使い方を工夫していく考え方です。ここで「スペースがないからこれは断念しよう」というわけではありません。

 

例えば、ワーキングスペースの考え方です。独立しなくてもよい場合は、リビングの一角に書斎を設けたり、デッドスペースを活用したり、さまざまな手段を考えられます。また、空間は平面だけではありません。立体的に空間を捉えると、仮に床面積が小さくても広く感じさせることができます。建てたあとに空間を広げるということは難しいので、何年後かに必要となりそうなスペースを広くとっておくなど、将来を想定した設計が重要になります。

 

完成:2017年9月、建物面積:139.94㎡(42.33坪)、分類:注文住宅、オーナー:SN様(母、子ども2人)
[図表1]事例:ガレージが中心の家 完成:2021年9月、建物面積:188.73m2(57.08坪)、分類:注文住宅、オーナー:IT様(夫婦、子ども2人)

 

駐車場・ガレージで居住空間が限られるも…間取りの工夫で無駄なく住む二世帯ファミリー

1階に駐車スペースを組み入れた家はよくありますが、事例の家はさらに大きなガレージも設けています。シャッターが2つあり、駐車スペースとガレージがつながった設計で、これは大工であるオーナーの仕事スペースと、バイクやアウトドアといった趣味を楽しむスペースを共有したもの。残ったスペースは同居するお母様の居住空間です。1.8mという広い廊下は、歩きやすさを優先し、将来手すりをつけることも想定しています。

 

限られた生活スペースは工夫だらけです。例えば、4帖の設計だったウォークインクローゼットを2帖に狭め、1帖をトイレ、もう1帖を仏壇の置き場という具合に目的がパズルのように組み合わさるように。2階のトイレの面積を小さくし、脱衣所に棚を設置するスペースも生み出しています。また、ハイタイプの扉は、視覚効果で開放的な空間に。スライド式なので開閉時の圧迫もありません。ほかにも寝室にワーキングスペースを設けるなど、まさに無駄のない間取りといえるでしょう。