地震大国である日本において、住まいの安全性は最重要課題です。しかし、耐震性に優れた家づくりは、コストや快適性とのバランスが難しいというイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。本記事では平松建築株式会社・代表取締役の平松明展氏の著書『住んでよかった家 理想の暮らしがずっと続く15の空間』(KADOKAWA)より、WB工法を取り入れた「コスパ最強&安心な家」の事例とともに、木造住宅ながら長く安心して暮らせる住まいを実現するためのポイントを解説していきます。
地震がきても倒壊せず、コスパのよい「日本の家」とは?…木造、真四角、あとひとつの「超重要・条件」 (※写真はイメージです/PIXTA)

断熱性の高い木造住宅で耐震性を高める

地震の多い日本での暮らしには、不安がつきまといます。それを解消するために耐震構造の改良がはかられています。耐震性だけに注目すれば、鉄骨造やRC構造が優れています。耐久性も高いので長い期間、安心です。ただ、木造住宅に比べて初期費用は高くなります。また建材自体が重いのでどの土地にも適応するかはわかりません。さらに断熱性が低いという側面もあります。断熱性が低ければ、冷暖房の光熱費が高くなります。

 

こうした背景もあり、木造住宅でいかに耐震性を高めることが、家づくりの1つの提案になります。

 

現在、1つの基準となる地震力は建築基準法で定められており、性能表示制度ではこれに耐えられるものを耐震等級「1」としています。震度6以上でも倒壊せず、さらに繰り返しの地震に耐えるには、等級「2」、「3」が必要です。長期優良住宅(所轄行政庁から認定される)では「2」以上が条件(例外あり)です。耐震性は耐久性も高くなければ維持できません。それを実現する工法の1つが、WB工法なのです。

 

完成:建築中(2024年12月現在)、建物面積:106㎡(32坪)、分類:規格住宅、オーナー:モデルハウス(3~5人想定)
[図表1]事例:コスパ最強&安心な家 完成:建築中(2024年12月現在)、建物面積:106m2(32坪)、分類:規格住宅、オーナー:モデルハウス(3~5人想定)

 

耐震性の高い「真四角の家」

地震による負荷を弱めるには、家にかかる力を分散することです。正方形や長方形の構造であれば、1階と2階の壁が垂直に揃っているため、4面の壁にバランスよく力が分散されます。耐震壁にして横揺れに強くし、真壁納(しんかべおさ)まりというもので力を逃す構造にできます。

 

真四角の家は構造がシンプルなことから、間取りの融通がきくというメリットもあります。事例の家は、間口が7m28cmで床面積は約105m2。間口が9mあれば建てることが可能な規格住宅です。

 

外壁と屋根はガルバリウム鋼板(アルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板)を使用し、軽くて耐震性が高く、耐久性も高いメリットがあります。太陽光発電の重量が大きくなっても心配ありません。断熱性や耐久性も高く、WB工法のため通気性にも優れています。さらに室内は吹き抜けを設置しており、夏は2階のエアコン1台で、冬は1階のエアコン1台で室内全体を適温にすることもできます。

 

このように耐震性の追求は、家のあらゆるところに波及します。次頁でその一部を紹介します。