(※写真はイメージです/PIXTA)
変化するライフステージと子どもを持たない選択
現代の日本では、結婚や出産の平均年齢は上昇し続けています。厚生労働省の統計によれば、2023年の初婚年齢は男性が31.1歳、女性が29.7歳。さらに、第一子出産の平均年齢も31.0歳を超えています。30年前の第一子出産年齢は平均28.97歳。30年で2歳強、高くなっています。
晩婚化やライフスタイルの多様化により、「子どもを持たない」という選択をする夫婦も増えています。2020年の国立社会保障・人口問題研究所の調査では、50歳時点で子どもがいない夫婦の割合は、男性で29.5%、女性で27.6%にのぼります。
浩さんの世代にとって、「結婚=子どもを持つこと」は当然の流れかもしれませんが、現代ではそうした価値観が変化しています。さらに、子どもを望んでいても自然に授かることが難しいケースも増え、不妊治療に挑戦する夫婦も増加しています。
2021年の調査によると、不妊の検査や治療を受けたことがある夫婦は22.7%。20年で1.8倍になりました。
また、不妊治療においては、費用負担も大きなハードルです。一般的に不妊治療にはさまざまなステップがあり、人工授精であれば1回2万円~3万円程度ですが、体外受精や顕微授精になると1回あたり40万円~60万円にもなります。保険適用が拡大されたとはいえ、自己負担も決して少なくありません。それ以上に精神的負担は計り知れず、途中で治療を断念するケースも珍しくないのです。
「何度か試さないと成功しないことも多いし、夫婦で話し合って、どこまでやるかも考えているんだ」
浩さんは、そんな息子の言葉を聞きながら、胸が締め付けられる思いでした。「孫の顔が見たい」という言葉が、息子夫婦にとってどれほどの負担になっていたのかを、ようやく理解したのです。「最終的に子どもを持つかどうかは夫婦の選択であり、強制するものではありません。ただ、彼らが望んでいるなら、親としてできる限りのサポートはしたいと考えています」と浩さん。経済的な支援は、さらに精神的な負担が増すとして、拓也さん夫婦は拒否。浩さんは陰ながら応援するようにしています。
[参考資料]
政府広報インライン『不妊治療、社会全体で理解を深めましょう』
厚生労働省『令和2年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業 不妊治療の実態に関する調査研究 最終報告書』
厚生労働省『不妊治療に関する支援について』