
グループLINEで始まる「年収マウント合戦」
厚生労働省『令和6年賃金構造基本統計調査』によると、サラリーマン(男性・正社員)の平均給与は月収37.6万円、年収619.5万円。また、大卒に限ると月収42.7万円、年収702.9万円が平均値です。自身の収入がこれよりも多いか少ないかで一喜一憂したり、他人と比べて優越感や劣等感を覚えたりと、給与によって心が乱されることは少なくありません。
石田大輔さん(仮名・40歳)は、最近、そのような体験をしたといいます。きっかけは高校時代の友人から持ちかけられた、卒業から20年ぶりの同窓会の話。
石田さんが通っていたのは、地元では進学校とされる男子校。進路は大きく、地元の大学に進学する「地元組」と、東京の大学に進学する「上京組」に分かれ、石田さんは前者でした。地元の国立大学に進学し、地元の大手企業に就職。「上京組」とは、学生時代には交流があったものの、社会人になってからはほとんど顔を合わせることがありませんでした。
軽い呼びかけで始まった同窓会でしたが、連絡手段としてグループLINEが作られ、参加を希望する同級生が次々と加わっていく――久しぶりのやりとりにLINE上でも会話が盛り上がっていましたが、次第に様相が変わっていきます。「今何してる?」という何気ない会話から、自己顕示欲の渦が巻き起こっていったのです。
最初のきっかけは、有名私大に進学し、外資系企業で働いていることをSNSで発信していた同級生の発言。「俺、XX商社で課長になったよ。年収もようやく2,000万円を超えた」とさりげなく自身の成功をアピールすると、別の上京組が負けじと発言。「うちはまだ小さい会社だけど、役員になった。自由な働き方ができるのがいいね」。さらに、国家公務員として省庁で働いているという上京組のひとりが公務員の安定性を強調すれば、公認会計士として独立したという同級生は「俺の場合、稼ぎに上限がない」と言い出し、会話の流れは「どれだけ自分の立場が優れているか」を競う場と化していきました。