4月からの年金受給額は前年から1.9%引き上げとなりますが、物価上昇分を下回り、実質減額。年金に支えられる高齢者の生活は、ますます厳しさを増しています。
風呂も入れない…「年金月6万円」失業中の78歳男性、真っ暗闇の部屋で賞味期限ギリギリのコンビニ弁当を食らう「貧困老後の現実」 (※写真はイメージです/PIXTA)

なぜ低年金となるのか?

厚生労働省のデータによると、厚生年金受給者の平均受給額は月14万6,429円ですが、月6万円未満の人は2.7%です。一方、国民年金のみの受給者の平均受給額は月5万7,584円で、中野さんのように月6万円未満の人は45.5%と半数近くに上ります。

 

公的年金等の収入が一定基準額以下の人には、老齢年金生活者支援給付金が支給されます。受給者は456万7,219人で、平均給付額は4,014円です。これは、450万人を超える高齢者が低年金で困窮状態にあることを示しています。

 

年金額が少ない主な原因は、雇用形態にあります。正社員ではなく、契約社員やアルバイトとして働く期間が長かったり、自営業者だったりする場合は、国民年金のみの加入となり、受給額は基礎年金のみとなります。基礎年金の満額は月6万9,308円(令和7年度)です。また、生活困窮により年金保険料の免除・猶予を受けたまま追納していない場合、満額受給は難しくなります。

 

働き方の多様化により、フリーランスや非正規雇用が増加し、国民年金のみの加入者が増加傾向にあります。これにより、低年金問題は今後さらに深刻化する可能性があるのです。こうした事態を防ぐためには、iDeCoやNISAなどを活用し、早めに老後資金を積み立てることが重要です。

 

生活保護に至らないまでも、経済的に困窮している人を支援する「生活困窮者自立支援制度」もあります。居住する都道府県や市町村の相談窓口に相談してみましょう。中野さんも「まだ働ける」とハローワークに通い、生活困窮からの脱却を目指しています。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』

厚生労働省『生活困窮者自立支援制度』