
70歳、待ちに待った年金受給開始
長年働き続けた末、ようやく年金を受給できるようになったとき、多くの人が喜びを感じるもの。しかし、中川修さん(仮名・70歳)は違いました。
「働いているうちは年金はいらない」と繰下げ受給を選択した中川さん。繰下げ受給とは、本来65歳から受け取れる年金を遅らせることで、受給額が増額される仕組み。1ヵ月遅らせるごとに0.7%増額となり、70歳まで繰り下げれば、本来の年金額に対して42%増額、75歳まで繰り下げれば84%増額されることになります。
――70歳まで待てば月20万円くらいになる計算でした。これなら仕事を辞めたあとの生活も安心だと思っていました
しかし、実際に振り込まれた金額を見て目を疑いました。振込額はおよそ17万円。確かに増額されているとはいえ、期待していた20万円には届きません。「こんなはずじゃない……」と、日本年金機構からの通知書を改めて確認しても、そこには支給額として月額約20万円と記されています。
「何かの間違いでは?」と納得できない中川さん、年金事務所へ直接足を運ぶことにしました。窓口で対応したのは30代くらいの男性職員。
「振込額が違う!」「おかしくないか?」と詰め寄る中川さんに対して、よくあることなのでしょうか、職員は年金は雑所得となり課税対象であることなど、冷静に対応してくれました。そのことが、逆にイラついたと中川さん。
――そんな話、聞いたことないぞ。最初にちゃんと説明しろよ!
怒りをあらわにしますが、制度として決まっていることを変えることはできません。職員も淡々と説明を続けるだけでした。このとき、中川さんの視線が職員の腕元に移りました。そこには、ピカピカに輝く高級腕時計。
――おい、ロレックスなんてつけてんじゃねぇよ。俺たちの年金を削って高級時計買ってんのか?
突然の指摘に、職員は驚いた様子。「思わずカッとなってしまった」と中川さん。年金が想定以上に少なく、相当焦っていたのです。