少しでも年金の受取額を増やしたいと、年金の受け取り開始時期を66~75歳に遅らせる代わりに年金受取額が増額となる「繰下げ受給」を選択する人が増えています。そして初めての年金振込日。ウキウキしているところ顔面蒼白という出来事が起きることも珍しくありません。
ロレックスなんてつけてるんじゃねぇよ!「年金月20万円に増額」と浮かれていたが「実際の振込額」に愕然。年金事務所に抗議に行った70歳男性、窓口でブチギレ (※写真はイメージです/PIXTA)

老後の生活設計には事前の情報収集が重要

職員にとっては、とばっちりともいえる事態でしたが、年金の額面と手取りの差に関しては多くの年金生活者が感じているところ。日本年金機構は「年金から税金が差し引かれています。どうしてですか。」という疑問に対して以下のように回答しています。

 

老齢の年金は、所得税法の雑所得として扱われ、所得税がかかることになっています。65歳未満の方でその年の支払額が108万円以上の方や、65歳以上の方で158万円以上の方の場合は、原則として所得税がかかります。年金に課税される所得税は、源泉徴収することとなっていますので、日本年金機構では年金を支払う都度所得税を差し引いています。

 

年金から引かれる税金(所得税など)や社会保険料(介護保険料、国民健康保険料など)について整理していきましょう。

 

所得税

公的年金等の収入がある場合、所得税が源泉徴収されます。最初の振り込みの時点から、すでに所得税が控除された状態で支給されます。

 

住民税

65歳以上で住民税の特別徴収対象となる場合は、年金から住民税が天引きされます。特別徴収が適用される場合、年金の振込時点で住民税が差し引かれますが、年金受給開始の初年度は特別徴収ではなく普通徴収(自分で納付)となることが多いです。

 

介護保険料

65歳以上であれば、原則として年金から介護保険料が天引きされます(特別徴収)。ただし受給開始後、最初の振り込み時点では天引きされていない場合があり、その後、市区町村が決定したあとに天引きが始まります。

 

国民健康保険料(後期高齢者医療保険料を含む)

国民健康保険(後期高齢者医療制度を含む)の加入者は、一定の条件を満たすと年金から保険料が天引きされます。年金受給開始直後は天引きされず、その後、市区町村が確定したあとに特別徴収が始まる場合があります。

 

年金の仕組みは複雑で、額面の数字だけを見ていると、実際に受け取る金額との差に驚くことになります。老後のライフプランも大きく変更を余儀なくされるでしょう。年金の手取りは85~90%程度と考え、準備しておくことが大切です。

 

[参考資料]

日本年金機構『年金の繰下げ受給』

日本年金機構『年金から税金が差し引かれています。どうしてですか。』