生命保険は相続税の節税対策として有効な手段として広く知られています。しかし契約内容や契約変更のタイミングによっては課税対象となるケースも。生命保険に関する税務判断は、慎重な選択が必要です。本記事ではBさんの事例とともに、相続対策としての生命保険の注意点について、CFPの伊藤貴徳氏が解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
これは非課税になりません…70歳元公務員・亡父が遺してくれた「1,000万円の生命保険金」。涙をこらえて受け取った40歳長男に税務調査官が告げた、まさかの一言【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

もう一つ、父が遺した生命保険

実は、父AさんはBさん自身にも生命保険を掛けてくれていたことがわかります。同じく一時払い終身保険でした。その契約内容は以下のとおりです。

 

契約者:Aさん

被保険者:Bさん

保険金受取人:Aさん

保険金:1,000万円

保険料は支払い済みとなっている状態

 

この一時払終身保険は解約をするとこれまで支払った保険料の一部が返ってくる、いわゆる「積立型」の保険です。Aさんは、Bさんが将来的に資金面で困ることのないよう、保険で準備を行っていたのでした。そんな父の気持ちに目頭が熱くなりました。Aさんの葬儀や相続の手続きを終えたあと、契約者をもう一つの保険と同様に父から自分へと変更しました。

 

税務署からの通知…税務調査が入ることに!

相続税の申告を終え、数年後のある日のこと。税務署からBさんのもとに「相続税の申告漏れがある」と連絡がありました。「相続税の申告漏れだなんて。そんなはずは……。しっかりと相続税について計算したのに……」Bさんは首をかしげます。

 

税務調査では調査官に「ここの部分(解約返戻金相当額)は非課税になりません」と指摘され、詳細な説明を受けました。

 

契約者(保険料負担者)と被保険者が異なる契約では、契約者が保険期間中に死亡した場合、新しく契約者(保険料負担者)となった人が契約の権利を引き継ぐことになります。このため、契約者が死亡した時点で、「生命保険契約に関する権利」として評価された金額が相続税の課税対象となります。つまり、相続開始時に解約した場合に受け取れる解約返戻金の額が、「生命保険契約に関する権利の評価額」となるということです。

 

一時払終身保険は、解約をした際に解約返戻金を受け取ることができます。これまで支払った保険料の一部が戻ってくる積立型の保険です。

 

今回のケースでは、父親であるAさんが息子Bさんを被保険者として契約した一時払終身保険について、Aさんの死後にBさんへ契約者の変更をした際に積立部分が相続税の課税対象となってしまったのです。