(※画像はイメージです/PIXTA)
自然の脅威を思い知る
その年の冬、さらに大きな出費に見舞われました。Mさん夫婦の家の敷地は300坪と広大なのですが、そこにある夜、大雪が降ったのです。一晩で膝丈の雪が積もり、病院の診察の予約が午前中にあるにもかかわらず、敷地から車を出せなくなりました。なんとか雪かきスコップで20メートルほどの長さの通路を作りましたが、3時間かかりました。身体中が痛くなり、外出する気力は残っていません。病院の予約はキャンセルとなりましたが、雪はさらに降り続き、その日の夕方にはまた元通りの状態になってしまいました。
「人力での除雪は年齢的に無理だから除雪機を買おう」と思い、ホームセンターまで1時間運転して出かけたものの、店員からは「除雪機は夏期間に予約販売していて、冬には買えない」と説明されてしまいました。念のため除雪機の値段を訊くと、Mさんの敷地の広さでは小型のものでは間に合わず、中型のものが必要とのこと。予算はおよそ100万円……。
「またとんでもない金額がかかるのか」と夫Mさんは笑いが込み上げてくるほどでした。幸い、隣の家のご家族がMさんが除雪機を持っていないのを見かねて、毎日のように除雪してくれて助かりました。人情の厚さに感動したものの、リタイアメントライフにもかかわらず高額な出費が続く状況に、今後の生活が不安になってしまいました。
さらなる不運、東京のマンションが…
お金の不安が募るなか、さらなる不運に見舞われました。東京で賃貸に出しているマンションで、住民が自殺しているのが見つかったと管理会社から連絡を受けました。40代の独身男性でしたが、孤独死をしていたようです。浴室で亡くなっていたらしく、配管には脂が詰まり悪臭を放つ状態とのこと。原状回復のために遺族に損害賠償請求ができると聞きましたが、払ってもらえる確証はなく、結局Mさんが負担することに。
家賃を下げないと客付けができないとも説得され、今後の大幅な減額に応じることになりました。それでも入居さえしてくれたら、最低でも月に10万円以上の手残りがある計算です。しかしネットでは事故物件情報がすでに晒されている状態。これでは売却は難しいかもしれません。なんとか賃貸として継続していくほうが無難でしょう。Mさん家族の自宅とはいえ、さすがに戻って住むことはないと自覚しました。もう移住先で定住するしかありません。