(※画像はイメージです/PIXTA)
田舎暮らしに抱いていた幻想のはじまり
<事例>
夫Mさん 63歳 大手メーカーを定年退職
妻Rさん 63歳 専業主婦
退職金を含めた現預金 5,600万円
利殖性資金 1,000万円
夫のMさんは60歳で大手メーカーを定年退職しました。65歳までは再雇用制度がありましたが、ある程度の金融資産ができたことからリタイアメントライフを楽しもうと思い、完全に仕事を離れる決断をしました。夫Mさんには定年退職したらやりたい夢があったのです。それは「田舎暮らし」をすること。
大学生時代はスキーに夢中になり、アルバイトで貯めたお金で長野のスキー場に通ったものです。就職してからスキーはめったに行けなくなりましたが、妻のRさんや子供たちを連れて、地方の温泉地を巡るようになりました。「自分には東京よりも田舎暮らしが性に合っているのかもしれないな」と、若いころからずっと感じてきました。
夫Mさんも妻Rさんも東京生まれ。大学も都内、夫Mさんは就職したのも都心の企業。独身時代に名古屋市に転勤になったことはありますが、社宅のマンションで暮らしました。Mさんのいう田舎暮らしは一度も経験がありません。
「自然が近いところで、のんびりと趣味を満喫しながら夫婦で暮らしたい。ちょっとした起業をしてマイペースに小遣い稼ぎをするのもいいな」
会社員時代はその夢を支えに、ストレスだらけの生活に耐えてきたのです。10年ほど前に長男と次男が大学に進学しました。長男は名古屋市の大学に、次男は札幌の大学に進学し、卒業後はそのまま現地で就職をしました。数年後にはどちらも結婚し、早々にマイホームを購入したのです。「もう東京には戻らないつもりなのか」と夫Mさんは驚きましたが、2人の新築祝いにそれぞれの新居を訪ねてその暮らしぶりにさらに驚きました。
80坪の広い土地に、延床40坪を超える二階建ての建物、家の前には車が3台停められるゆとりもあります。長男次男ともにダブルインカムで世帯年収は800万円程度。「東京ならギリギリの生活になる年収だが物価の安い地方ならこんな裕福な暮らしになるんだな……」Mさんは感心しきりです。
夫Mさんは30年前、結婚後まもなく都心にマンションを購入しました。交通の便はいいものの間取りは狭く、子供たちにずいぶんと窮屈な思いをさせたのかもしれないと思いました。定年退職したら自分たちもどこか田舎で暮らそう、子供たちを見てそう決めたMさんでした。