
後輩が部長に抜擢!プライドがズタボロの先輩課長
“ザ・日本企業”の井上さんが勤める会社。しかし、近年、業界の変化に対応するため、若手社員の抜擢人事を積極的に行うようになりました。田中さんは、その抜擢人事の象徴とも言える存在だったのです。
井上さんは、複雑な感情を抱きながらも、田中さんを祝福しました。
――おめでとう。すごいじゃないか
しかし、内心は穏やかではありませんでした。長年、会社のために尽くしてきた自分よりも、若い後輩が先に昇進していく。年功序列が当たり前の会社だと思っていたのに、自分は一体何のために頑張ってきたのだろうか。そんな疑問が頭のなかを駆け巡りました。
田中さんが部長に就任してからの日々は、井上さんにとって、これまで以上に厳しいものとなりました。田中さんは、新しい風を吹き込むべく、次々と改革を打ち出しました。会議の効率化、目標設定の見直し、評価制度の変更……。そのスピード感と徹底ぶりに、井上さんは戸惑いを隠せませんでした。
田中さんは、井上さんにも容赦なく厳しい要求を突きつけました。
――井上課長、この資料、もっと具体的にデータを分析してください
――この提案、斬新さが足りません。もっとアイデアを出してください
田中さんからの叱責や激詰めが続く毎日。井上さんは、次第に自信を失っていきました。さらにある日、井上さんは田中さんから呼び出されました。
――井上課長には、これまで本当に感謝しています。新卒のころから、本当によくしていただきました。ただ、これからは、部長として、会社全体のことを考えなければなりません。井上課長にも、これまで以上に成果を出していただきたいと思っています
田中さんは、そう続けると、井上さんに厳しい目標を提示しました。井上さんは、その目標を聞いて、絶望的な気持ちになりました。とても達成できるとは思えなかったからです。
――もう会社、辞めようかな
株式会社セルバが20〜50代の社会人に対して行った調査によると、54%が「後輩が上司になった経験がある」と回答。後輩に先を越されることは珍しいことではありません。さらに「後輩が上司になったら転職を考えるか?」の問いに対しては、「考えない」が52%、「選択肢に入れる」「積極的に考える」を合わせると48%と拮抗。
後輩上司に対してネガティブな理由としては、「自分が正当に評価されていないと感じるから」が最も多く、「会社が求めるものと自分の能力が合致しないから」「会社と価値観が合わないと感じるから」「自分は会社にとって不要な人材なんだと判断するから」と続きました。
井上さん、つらい毎日のなか、転職に向けて情報収集を始めています。
[参考資料]