年功序列が当たり前だった日本企業。今でもその慣習は色濃く残り、先輩/後輩の間柄が崩れることはない、というのも珍しくありません。一方で実力主義が浸透し、最近は抜擢人事も。後輩だったあいつが、いつの間にか上司に……実際にこのような事態に直面したら、どうしますか?
先輩、今日から私が上司です…月収60万円・大手企業の45歳課長、突然、後輩が部長に昇進。年下上司からの叱責、激ヅメの毎日に「もう会社、辞めようかな。」

後輩が部長に抜擢!プライドがズタボロの先輩課長

“ザ・日本企業”の井上さんが勤める会社。しかし、近年、業界の変化に対応するため、若手社員の抜擢人事を積極的に行うようになりました。田中さんは、その抜擢人事の象徴とも言える存在だったのです。

 

井上さんは、複雑な感情を抱きながらも、田中さんを祝福しました。

 

――おめでとう。すごいじゃないか

 

しかし、内心は穏やかではありませんでした。長年、会社のために尽くしてきた自分よりも、若い後輩が先に昇進していく。年功序列が当たり前の会社だと思っていたのに、自分は一体何のために頑張ってきたのだろうか。そんな疑問が頭のなかを駆け巡りました。

 

田中さんが部長に就任してからの日々は、井上さんにとって、これまで以上に厳しいものとなりました。田中さんは、新しい風を吹き込むべく、次々と改革を打ち出しました。会議の効率化、目標設定の見直し、評価制度の変更……。そのスピード感と徹底ぶりに、井上さんは戸惑いを隠せませんでした。

 

田中さんは、井上さんにも容赦なく厳しい要求を突きつけました。

 

――井上課長、この資料、もっと具体的にデータを分析してください

――この提案、斬新さが足りません。もっとアイデアを出してください

 

田中さんからの叱責や激詰めが続く毎日。井上さんは、次第に自信を失っていきました。さらにある日、井上さんは田中さんから呼び出されました。

 

――井上課長には、これまで本当に感謝しています。新卒のころから、本当によくしていただきました。ただ、これからは、部長として、会社全体のことを考えなければなりません。井上課長にも、これまで以上に成果を出していただきたいと思っています

 

田中さんは、そう続けると、井上さんに厳しい目標を提示しました。井上さんは、その目標を聞いて、絶望的な気持ちになりました。とても達成できるとは思えなかったからです。

 

――もう会社、辞めようかな

 

株式会社セルバが20〜50代の社会人に対して行った調査によると、54%が「後輩が上司になった経験がある」と回答。後輩に先を越されることは珍しいことではありません。さらに「後輩が上司になったら転職を考えるか?」の問いに対しては、「考えない」が52%、「選択肢に入れる」「積極的に考える」を合わせると48%と拮抗。

 

後輩上司に対してネガティブな理由としては、「自分が正当に評価されていないと感じるから」が最も多く、「会社が求めるものと自分の能力が合致しないから」「会社と価値観が合わないと感じるから」「自分は会社にとって不要な人材なんだと判断するから」と続きました。

 

井上さん、つらい毎日のなか、転職に向けて情報収集を始めています。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』

株式会社セルバ『【社会人300人調査】2人に1人が後輩が先に出世して上司になった経験あり』