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「すべてが順調」と信じていた元大企業会社員の誤算
「まさか、すべてが計算通りに進められていたなんて、夢にも思いませんでした」
都内・大企業を定年退職した神田純一さん(60歳・仮名)。神田さんは現役時代、エリート街道を歩んできました。真面目で実直な性格であり、仕事にすべてを捧げてきたという自負もあります。妻の美智子さん(57歳・仮名)とは20代後半で結婚し、一男一女に恵まれました。長男はすでに独立して地方で暮らしていますが、長女の陽子さん(31歳・仮名)は都内の企業に勤めながら、実家で同居を続けていました。
神田さんにとって、家族は自分が苦労して養ってきた、何不自由のない存在でした。退職金として口座に振り込まれた金額は、平均的な退職金額を大きく上回る3,000万円。現役時代の貯蓄と合わせれば、老後の資金計画は万全のはずでした。
「現役時代は平日の帰宅が深夜になることも多く、土日も仕事の付き合いで家を空けがちでした。ゆっくりと家族との時間をとることはできなかった。退職して時間ができたら、家族と旅行にでも行きたいと考えていました」
事態が急変したのは、退職金が神田さんの指定口座に振り込まれた日のこと。その夕方、リビングでくつろいでいるところに、仕事から帰宅した長女の陽子さんと、パートを終えた美智子さんが揃って入ってくると、美智子さんの口から出たのは、冷徹なトーンの言葉でした
「もう、あなたといる理由がありません。私たちは家を出ます」
驚き、言葉を失う神田さんに対し、美智子さんは淡々と条件を提示してきました。財産分与として、今回振り込まれた退職金の半分である1,500万円、さらに現在の自宅の売却益に相当する現金の支払いを要求する内容でした。
「最初は冗談かと思いました。激昂して理由を問い詰めましたが、妻の目は完全に据わっていました。横に立つ娘も、私を庇うどころか、冷ややかな視線を向けるだけでした」