
後輩「新卒のころ本当にお世話になりました」とお礼とともに
厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、大卒・役職ありのサラリーマン(平均年齢48.0歳)の平均給与は月収で46.5万円、賞与も含めた年収は765.2万円です。
さらに細かくみていきましょう。大卒係長の平均年齢は44.2歳。平均給与は月収で39.1万円、年収で674.4万円です。
そして大卒課長。平均年齢は48.6歳、平均給与は月収で53.3万円、年収で877.8万円です。
さらに大卒部長。平均年齢は52.6歳、平均給与は月収65.6万円、年収は1,054.1万円です。
ただこの年齢の通りに誰もが昇進していくわけではありません。ときには抜てき人事で年齢など関係なく、能力や実績によって若手リーダーが誕生、ということも決して珍しいことではありません。もちろん、どの会社でも起こりうるかといえばそういうわけではなく、年功序列の名残が今なお色濃く残る日本企業では、珍しいことではあるようです。
そんな抜擢人事によって大変な思いをしているという、大手情報系企業で働く井上直樹さん(仮名・45歳)。会社は“ザ・日本企業”。人によって幅はあるものの、基本的に年功序列で昇進・昇給していくシステムです。
現在、井上さんは、20名ほどの部下をまとめる課長。中間管理職として、上からのプレッシャーと部下からの突き上げに挟まれながらも、月収60万円、年収1,000万円を超える給与で、何とか辛い日々をやり過ごしていました。同期よりも高い給与が、井上さんにとって心の支えとなっていました。
そんなある日、井上さんの職場に波乱が訪れます。
――先輩、お久しぶりです!
それは、5歳ほど年下の後輩社員、田中淳さん(仮名)でした。彼が新卒のころ、同じチームに配属され、井上さんは初めて教育係に抜擢されました。社会人になりたてで右も左もわからない後輩に、社会人としてのマナーから丁寧に教えた間柄でした。
――私、このたび、第1営業部の部長になることになりました。よろしくお願いします。
田中さんは、爽やかな笑顔でそう告げました。井上さんは、一瞬、言葉を失いました。まさか、自分が教育係を務めた後輩が、自分を追い越して部長になるとは、想像もしていなかったからです。