高齢化が急速に進む日本において、介護問題は深刻さを増しています。「最期は住み慣れた自宅で」という高齢者の願いは、多くの人に共通するもの。しかし、現実には様々な課題が立ちはだかり、その願いが叶わないケースも少なくありません。
絶望でしかありません…年金月16万円〈82歳母〉「最期は自宅で」と希望していたが、「老人ホーム」に半ば強制入居。3年経った今も〈息子夫婦〉を逆恨み (※写真はイメージです/PIXTA)

息子夫婦「面倒はみられない」といわれ…

朝8時に食事を終え、そのあとは庭を望むラウンジで過ごすのが日課だという林美智子さん(仮名・82歳)。10年前に長年連れ添った夫を亡くし、ひとり暮らしをしていましたが、3年目にこの有料老人ホームに入居しました。

 

以前住んでいた戸建ては新婚時に建てたもので築50年。さすがに傷みも目立つようになっていましたが、ここには夫とひとり息子の大介さん(仮名・現60歳)と過ごした日々が刻まれて、深い愛着をもっていました。だからこそ、我が家を離れることになったときは本当に辛かったといいます。

 

息子夫婦とは当初は同居していましたが、子ども(孫)の就学前に都内にマンションを購入し転居。自宅からは車で1時間ほどのところでしたが、会うのは3~4ヵ月に一度だったといいます。「もっと孫の顔をみせに来てくれたらいいのに……」。来てくれないなら会いに行けばいいのですが、大介さんの妻・陽子さん(仮名・現58歳)に迷惑をかけるのではと気が引けてしまい、寂しい思いをしていました。

 

ある日、美智子さんは自宅で転倒し、骨折。幸いにも大事には至ることはなく、1ヵ月ほどで退院できましたが、その間に足腰は弱くなり、退院当初は支えがないと歩行もままならない状態に。今は筋力も回復し、以前ほどではないにしろ、ひとりで歩けるようになりましたが、そんな母をみて大きなショックを受けたのは大介さん。これを機に、家族の間で話し合いが行われることになりました。

 

「もう、ひとり暮らしは無理なんじゃないの?」と大介さん。さらに「私は父の面倒があって、お義母さんまではとても……」と、陽子さん(仮・現58歳)。ふたりとも、暗に「あなたの面倒はみれませんよ、どうにかしてください」といわれている気がしました。

 

――最期は大好きなこの家で迎えられたらいいわね

 

大介さんとはそんな話をしたことがありました。でも、そんなことはとうの昔に忘れてしまったのでしょうか。