日本の企業の6割強が60歳を定年とし、定年を迎えた9割弱が再雇用を希望するなか、定年を機に新天地を目指すサラリーマンも少なくなりません。ただ「これまでのキャリアと実績を生かしたい!」と意気込むものの、空回りすることも珍しくないようです。
何かの間違いだろ…「月収40万円、しかもボーナスは別途支給」好条件に飛びついた〈退職金2,400万円〉60歳定年サラリーマンの大誤算。転職わずか3ヵ月で退社のワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

好条件の求人を発見!企業規模が気になったが…

なかなか転職活動に進展がないなか、ひとつの求人が目に留まります。仕事内容は小林さんのキャリア・実績を生かせるコンサルタント業。待遇は契約社員であるものの、給与は月40万円、賞与別途という、なかなかの待遇です。

 

唯一気になる点は、会社規模。それまで小林さんが働いていた会社は、従業員数の多い大企業。対し、その会社は従業員30名ほどだといいます。このような会社で働いたことがない小林さん。少々不安を感じながら応募したところ、あれよあれよとことは進み、あっという間に内定が出たといいます。

 

――決まるときはスムーズに決まるもんだ

 

大企業で活躍していた人に来てもらいたかったと熱烈なオファーを受け、入社することを決意した小林さん。入社初日、期待と緊張を胸にオフィスへと向かいました。しかしすぐに、「あれ、聞いていたのと話が違う」と感じたといいます。

 

それは大企業と中小企業の役割分担。これまでの職場では役割分担が明確で、チームとして動くスタイル。一方で新しい職場では業務プロセスや役割分担が曖昧で、一人ひとりに求められる業務範囲が非常に広く、その対応に苦慮しました。また急遽、営業や事務作業など、専門外のことを任されることも多かったといいます。

 

さらに大手企業で当たり前だったITツールや効率化されたシステムが整備されておらず、資料作成やデータ管理などに多くの時間を費やす必要がありました。この非効率さのなか、即戦力として期待されていた小林さんはなかなか実力を発揮できず、大きなストレスを抱えるようになります。

 

――これまで大企業で活躍してきたのに……何かの間違いだろ

 

大きなストレスを抱えたまま実力を発揮できず、小林さんはわずか3ヵ月で退職することになったといいます。

 

調査対象が65歳以上と小林さんとは少々異なりますが、株式会社LIFULLによる『シニアの就業に関する意識調査』によると、シニアの83.0%が「これまでの経験やスキルを活かすことのできる職種で働きたい」と回答しつつも、65歳以上の人材の採用を積極的に行っているのはわずか2割。さらに65歳以上の人材を採用しない(できない)理由として、「体力・健康面に不安」が最多で42.2%。次いで「任せられる仕事がない、わからない」が34.3%、「即戦力として活躍が期待できないから」が24.5%と続きました

 

働きたい高齢者と、高齢者を採用する企業。そこには大きなギャップが生じています。

 

[参考資料]

株式会社LIFULL『シニアの就業に関する意識調査』