
定期借地権付きタワーマンションのデメリット
定期借地権付きマンションを購入する場合、デメリットが自分のライフプランにどのように影響するのか精査することが重要です。
借地権の期限が50年の場合、築15年を過ぎたころから売却は難しくなるものと理解すべきです。解体までの残年数が35年を切っていくと、購入予定者は35年ローンを借りることができなくなります。それ以前に解体まで35年しか猶予が残っていない物件に、35年ローンで購入する人はいないでしょうから、売却は不可能と覚悟したほうがよさそうです。解体時期までは賃貸に出すことは可能ですが、解体直前は入居者も見つからず、家賃を下げ続けることになるかもしれません。定期借地権付きマンションに「資産価値」という考え方は無理があるでしょう。
また、売却を考えず終の棲家ならいいかというと、決してそうでもありません。購入年齢が若ければ、借地権の期限が到来したときにもまだ生存している可能性もあるからです。たとえば30歳の人が借地権の50年の期限を迎えるのは80歳です(実際に退去するのは78歳~79歳)。人生の終盤で引っ越しを余儀なくされることになります。そのときは、マンションは売却ではなく「解体」となるため、手元に売却代金は残りません。解体後にどこに住むのか、その費用をどうするのかを考えておく必要があります。
近年、期限が70年の定期借地権も見受けられるようになりました。これならば「35年ローン×2回分」に相当する期間であるため、終の棲家としては十分であり、売却もある程度は可能かもしれません。しかし、通常の分譲マンションの寿命が100年以上と想定されることを考えると、寿命の短さは資産価値の低さにも繋がります。
借地権の期限を迎えると、子供世代にとっては「実家が消滅する」ということを意味します。期限までに子供が全員実家を出て自立し、自分の住まいを確保できるのであればいいのですが、もし障害を抱える子供がいる場合、子供が生きていくための資産としてマンションを残すことができないため、子供の将来に強い不安を感じることになるでしょう。マンション以外の資産を貯えておく必要がありますが、収入に余裕がない場合はそれも難しくなります。
定期借地権付きマンションは、住宅ローンのほかに「通常の管理費」「修繕積立金」に加え、「解体積立金(原状回復積立金)」「地代(地主への賃料)」の支払いもあります。解体積立金や地代は物件によって大きな差があり、それだけで月1万円~4万円程度となります。その支払いを含めても安い買い物といえるのか、冷静に判断する必要があります。
定期借地権付きマンションの購入は、期限の到来という「出口」で家族が何歳なのか、どのような健康状態なのか、預貯金はどのくらいあるのかを精査しながら慎重に検討する必要があります。
長岡理知
長岡FP事務所
代表