投資をしない理由として「そもそも元金がない」という声があります。そう考えるのであれば、まとまったお金が入ったタイミングはまさに投資のはじめどき。定年退職金を受け取るタイミングは、まさにそのときだといえるでしょう。老後の資金のため、さらには小さな孫の成長のために……しかし、投資である以上、得をすることばかりでないことはいうまでもありません。
浅はかでした…〈退職金2,200万円〉60歳定年サラリーマン「孫にカッコいい姿を見せたい!」と投資デビューも〈株価大暴落〉に悶絶 ※写真はイメージです/PIXTA

孫の喜ぶ顔をみたい!株主優待を目的に株を買い増したが…

これまで資産運用といえば定期預金くらいしかしてこなかった徹さん。退職金2,200万円を軍資金に、初めて「株式投資」に挑戦することにしました。右も左もわからなかったので、とりあえず、知っている企業の株式を購入することにしたといいます。ちょうど、マーケット全体が上向いているころ。投資した株式は順調に上昇していきました。

 

さらに想定外のうれしいことも。株主優待です。最近、連れていくと陽翔くんが大喜びの飲食店の運営企業に投資。株主優待として割引券をゲットしていました。

 

――お得に食事ができて、孫も大喜び。「じぃじは株主なんだぞ」と自慢なんかして(笑)

 

「これはいい」と思い、その飲食店の株式を買い増していった徹さん。

 

――私たち夫婦と長男家族が食べにいてっても余るくらいの優待を受けることができました。株主優待の魅力にはまって、ほかにも陽翔が喜びそうな優待のある株式を中心に投資をしていったんです

 

そんな徹さんに大事件。陽翔くんが大好きな飲食店の運営企業が突如、株主優待の廃止を発表したのです。

 

――えっ、陽翔の喜ぶ顔がみたいと思ったから買ったのに。優待がないなら、持っていても意味がないですよね

 

そう考えている間に市場は反応。あっという間に3割以上も下落。400万円近くあった評価額は、一気に280万円を下回ったといいます。

 

株主優待を楽しみにした株式投資でよくある失敗が、優待廃止による株価の大暴落。優待はなくなるは、株価は暴落するし、踏んだり蹴ったりというパターンです。さらに魅力的な優待で人気の銘柄は、優待の権利取り直前に株価が急騰。権利落ち後に株価が急落するというのはよくあるパターン。そんな事情を知らず、急騰のときに買い増し。急落に青ざめるというのもお決まりのパターンです。

 

Q.現在いくつ個別株の銘柄を保有していますか?

・1~3銘柄…33.2%

・4~5銘柄…26.0%

・6~8銘柄…13.0%

・9銘柄以上…27.8%

Q.株主優待を目的に、特定の銘柄を選んで購入したことがありますか?

・ある…80.4%

・ない…19.6%

出所:株式会社DIGITALIO『株主優待に関する調査』

 

また配当金よりも株主優待を好む傾向のある日本人。度が過ぎて、高配当利回りの株を無視してしまうという、非効率な投資をしてしまいがちなのももったいない話です。

 

――優待廃止後も下落を続け、今のところ上昇の気配なし。孫の喜ぶ顔を想像して優待ばかり気にしていました……本当に浅はかでした

 

いい勉強をしたと仕切り直しの徹さん。株式優待一辺倒を辞め、日々勉強中。優待廃止の銘柄は売り時を考えているといいます。

 

[参考資料]

株式会社KG情報『祖父母と孫の関係についてのアンケート調査』

株式会社DIGITALIO『株主優待に関する調査』