子ども1人につき教育費の目安は約1,000万円といわれるなか、親への恩返しと仕送りを続ける人たちも。ただ問題になるのが「いつまで親に仕送りを続けるのか」。当然、子どもたちも年を取り、老後に備えなければなりません。これ以上仕送りを続けるのは難しいと判断したとき、果たして……。
〈退職金2,000万円〉〈年金想定月17万円〉60歳定年サラリーマン、遠方の母への仕送り40年「もうこれ以上お金は…」にかぶせて言い放たれた〈年金月14万円・83歳母〉の戦慄のひと言 (※写真はイメージです/PIXTA)

辞められない「親への仕送り」…60代で平均6.7万円

老後を見据えて資産形成に注力したいと考えている原さん。ただひとつ、懸念していることがあるといいます。田舎の実家で暮らす母への仕送りです。大学進学を機に上京した原さん。就職してからは親への仕送りは欠かしたことがありませんでした。

 

――最初は5,000円くらい。最近は月5万円ほどの仕送りをしています

 

母の年金は自身の年金と、3年前に亡くなった父の遺族年金と合わせて月14万円ほど。田舎で持ち家。贅沢できるわけではありませんが、仕送りなしでも暮らしていけると思えました。自分たちも老後に片足を突っ込んでいる立場。これ以上の定期的な仕送りは、正直きついものがあります。妻からも「そろそろ仕送りするのは辞めてもらたら」といわれています。

 

――よし、定年を機に仕送りは辞めることを伝えよう

 

そう意気込んで母に電話。3コール目くらいに母が出ます。

 

――かあちゃん、俺だけど

 

最近は耳が遠くなり、電話では会話のキャッチボールがスムーズにいきません。必然的に声が大きくなります。

 

――仕送りだけど、これ以上のお金……

 

そういうと「あぁ、仕送りかぁ。待っているんだが、いつもの5万円はいつになるんだぁ?」と母はかぶせ気味にいいます。どうやら息子が60歳定年を迎えようと、仕送りをもらえると信じて疑っていないようです。そのような相手に「これ以上お金は送れない」といえるでしょうか。

 

母の戦慄の先制パンチに言葉を続けることができなかった原さん。「元気にしてる?」などと取り留めもない話をして話は終了。仕送り停止の計画はいったんは破綻したといいます。

 

――親への仕送り、いったい、いつまで続けたらいいのでしょうか?

 

厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』によると、親に仕送りをしている世帯はわずか2.0%。また、60代世帯で親に仕送りをしている世帯は2.6%。1世帯当たりの平均仕送り額は月6.7万円です。介護費や医療費の自負負担額が増えるからでしょうか、自身の年齢=親の年齢があがるにつれて仕送り額は増えていきます。

 

【年齢別・親に仕送りをしている世帯の割合と平均仕送り額】

20代…2.75%、3.9万円

30代…2.69%、5.2万円

40代…3.19%、4.9万円

50代…3.84%、5.4万円

60代…2.62%、6.7万円

70代以上…0.34%、8.7万円

 

――月5万円……これ以上は本当に無理です

 

老後を見据えて加速させたい資産形成。早くも暗雲が立ち込めています。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]』

厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』