(※写真はイメージです/PIXTA)
「保護者ファースト」の校長によって業務がさらに増加。理想とのギャップに悩み…
混乱する職員室。ただすべての学校で混乱しているわけではなかったといいます。
――同期の先生たちから聞いて、校長によって学校の運営の考え方、やり方がずいぶんと違うことがわかりました。私が赴任した校長は、とにかく教育委員会とか、保護者とかを過度に気にするタイプ。何かあると、すぐに「教育委員会に怒られるから」「保護者からクレームが入るから」と。それによって業務が増え、教師はみな疲労困憊でしたよ
保護者の対応も大変だったといいます。クラス担任を持ったばかりのころ、保護者から電話。「家に遊びにきた児童と息子が喧嘩になった。どうにかしてほしい」というものでした。
――せめて下校途中であれば指導の範囲ですが、家に帰ってからというのはさすがに……でも校長から「しっかり対応しなさい」といわれました。確かにクラス運営がうまくいかなくなると私も困るので、結局対応することになったんです
そもそも教師は、仕事と私生活の境があいまい。明らかに家庭の問題といえるものも学校に連絡が入り対応しなければならない……長時間労働を助長させる、ひとつの要因です。
――保護者対応も学校によって違うようです。うちの学校は保護者ファーストでしたから……
子どもたちの成長にやりがいを見出し教師を志したものの、“それ以外”のことに時間を割かれる日々。準備に時間を割くことができず、何とも中途半端な授業をしてしまうことが続いていました。理想と現実のギャップに大きなストレスを感じ、教師になって5年目、体調不良で初めて休みました
――こんなの私が目指した先生じゃない、先生なんてならなきゃよかった……そんなことばかり考えてしまい、涙が止まらなくなったんです
このときはすぐに職場に復帰したものの、再び、体調不良に。長期休みのうえ、退職することになりました。文部科学省『令和5年度公立学校教職員の人事行政状況調査』によると、公立学校の教育職員のうち、精神疾患による病気休職者数は7,119人で、全教育職員数の0.77%に相当します。これは前年度(令和4年度)の6,539人から580人増加しており、過去最多。教職員のメンタルヘルス不調による休職者数は年々増加傾向にあり、特に近年その傾向が顕著となっています。
年齢別にみていくと、20代では2019年、精神疾患による病気休職者は全体の0.56%だったのが、2023年には0.83%に増加。30代では0.70%から0.96%、40代では0.72%から0.94%、50代以上では0.57%から0.66%。全世代で増えています。増加幅でいうと、20代若手が特に顕著だといえるでしょう。
理想が強かったからこそ、メンタルヘルス不調に陥った金子さん。教育からは遠いIT業界に転職したのはそのためです。
――今でも先生は憧れの仕事ではあるんですが……理想は叶いそうもないので、もうやめておきます
[参考資料]