
持ち家の高齢者夫婦に物価高が直撃!
中川淳さん(仮名・75歳)・悦子さん(仮名・71歳)。40年前に購入したマンションで夫婦で2人暮らし。年金は淳さんが月17万円、悦子さんが月7万円。さらに悦子さんが清掃のアルバイトで月3万~4万円ほどの給与があります。
――働けなくなったら、ここ(=マンション)に住み続けるのも限界かもしれませんね
多くの日本人と同じように、中川さん夫婦も持ち家派。結婚後、当たり前のようにマイホームの購入を決断しました。
――戸建てかマンションかは悩みましたが、家を買うことに迷いはありませんでした
最終的に3LDKのマンションを購入した中川さん夫婦。当時としては最新の設備を備える、ピッカピカの新築マンションだったといいます。ただ最近になって、中川さんは「持ち家よりも賃貸のほうがよかったかな」と後悔する気持ちも大きくなっています。
昨今、「高齢者の賃貸派の苦労」について問題視されています。株式会社R65が全国の賃貸オーナーを対象に行った『高齢者向け賃貸に関する実態調査』によると、「高齢者の入居を受け入れていないという賃貸オーナー」が41.8%。また同社が全国の65歳を超えて賃貸住宅の部屋探し経験がある人を対象に行った『高齢者の住宅難民問題に関する実態調査(2023年)』によると、26.8%が「年齢を理由とした賃貸住宅への入居拒否」を経験し、さらに「5回以上断られた経験がある人」は11.9%でした。入居拒否に収入による差はなく、高齢者は総じて「家が借りにくい」という状況です。
そう考えると、高齢者であれば持ち家のほうが安心だと思えますが、なぜ「賃貸のほうがよかった」と思うのでしょうか。
――管理費・修繕費の値上がりがすごいことになっているの
以前は管理費が月1万8,000円、修繕積立金が月1万5,000円だったといいますが、この物価高の影響で、この数年で倍近くになったのだとか。
株式会社東京カンティの調査によると、首都圏の新築マンションの管理費・修繕積立金は右肩上がり。2014年、管理費が平均1万5,260円、修繕積立金が平均6,719円だったのが、2023年には管理費が2万0,358円、修繕積立金が8,729円。それぞれ33.4%、29.9%と値上がりしています。また国土交通省が行った調査によると、段階増額積立方式のマンションにおいて、長期修繕計画の計画当初から最終計画年までの値上げ幅の平均は約3.58倍でした。値上げ幅が大きいと、一部の世帯は支払いが困難になる懸念があります。
――今はパート代で値上がり分を払っているようなもの。働けなくなったら厳しいよね