低金利の変動金利で住宅ローンを組んだものの、近年の金利上昇で返済額が増加し、家計を圧迫されている人は少なくありません。変動金利の利用者は、金利上昇に対しどのような対処をすればよいのでしょうか? 本記事ではAさん夫妻の事例とともに、家計を守るための対処法について、CFPの伊藤貴徳氏が解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
詰みました。「変動金利」を選んだ世帯年収900万円の40代夫婦「都内6,000万円のマイホーム」の灯が消えるまで…金利0.2%上昇で酷すぎる事態に【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

変動金利を選ぶ人の割合

住宅金融支援機構【住宅ローン利用者調査(2023年4月調査)】によると、住宅ローンの利用者の72.3%が変動金利を選んでいます。 その理由として多く挙げられるのは低金利でしょう。固定金利と比べると変動金利のほうが金利が低いため、返済額が安くなります。そのため、多くの人々が変動金利による低金利のメリットを享受しようとしています。 

 

A夫妻もそのうちの一組でしたが、変動金利のリスクについては深く考えていませんでした。変動金利は市場金利の変動に応じて金利が見直されるため、将来的に金利が上昇すれば、毎月の返済額も増加します。特に、借入額が大きく、返済期間が長い場合、金利上昇の影響は家計に大きな負担をもたらす可能性があります。 

「いますぐ固定金利に乗り換える」選択肢はアリ? 

住宅ローンの返済中には「借り換え」という選択肢もあります。一連のニュースを踏まえ、借り換えをすべきかどうか悩む相談者も増えました。ここでは、変動金利から固定金利への借り換えのメリット・デメリットと検討の際のポイントについてまとめていきます。

 

メリット:金利上昇リスクの回避

 固定金利に変更することで、将来的な金利上昇による返済額の増加を防ぐことができる。 

 

デメリット:返済額の増加

一般的に、固定金利は変動金利よりも高いため、月々の返済額が増加する可能性がある。たとえば、変動金利0.5%から固定金利1%に変更すると、月々の返済額が約1万5,000円増える(借入額6,000万円の場合)。

 

検討ポイント:総返済額のシミュレーション・手数料の確認

固定金利への変更による総返済額の増減をシミュレーションし、家計への影響を確認しましょう。 また、借り換え時には手数料が発生する場合があるため、事前に確認が必要です。 

 

住宅ローンを組む際、多くの人が「いまの支払いができるなら問題ない」と思いがちです。しかし、金利は経済状況によって変動し、「将来的に支払いができなくなるリスク」を見落としてしまうケースが少なくありません。 特に、変動金利を選んでいる人は金利上昇の影響をシミュレーションせずにいると、徐々に家計が厳しくなる可能性があります。