タワーマンションの上層階で体験する激しい揺れ、そして災害時の閉じ込めの危険性……これは単なる想定ではなく、現実に起こり得る問題です。本記事では、Kさん夫婦の事例とともに防災の視点から、タワーマンション購入にあたっての重要なポイントについて長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。※相談者の了承を得て、記事化。個人の特定を防ぐため、相談内容は一部脚色しています。
埋立地にそそり立つ「安全地帯」?…やがてくる巨大地震。世帯年収1,520万円・31歳パワーカップルがまだ知らない“1億円超湾岸タワマン”の「想像を絶する恐怖」【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

大地震と資産価値の問題

立地にもよりますが、タワーマンションは資産価値が高いものと考えられています。戸建て住宅と比べると換金性が高く、定年退職や転職などライフステージが変わるタイミングで売却しやすい傾向にあります。特に東京都の湾岸エリアのタワーマンションは投資対象としても人気が高く、投資マネーの流入がマンション価格を押し上げているほどです。湾岸エリアは中央区や江東区へのアクセスがよく、都心で働く人たちにとって利便性に優れています。

 

しかし将来の大地震という要素が加わると、資産価値について立ち止まってよく考えたほうがいいかもしれません。タワーマンションは立地の利便性やそのブランド性、快適性を資産価値と考えがちです。一方で「安全性」と「生活の継続性」も資産価値に影響を与えるようになっています。生活の継続性は福祉でも使われる言葉です。住み慣れた生活環境や生活リズム・習慣を変えることなく、できるだけいままでどおりの生活を継続できることという意味ですが、まさに将来大地震を控えているタワーマンションに突きつけられている課題です。

 

大地震でも命が助かり支障なく生活が継続できるためには、建物の耐震性や発電設備などのハード部分はもちろん、管理組合による食料の備蓄や大災害に乗じた犯罪への対策などソフト面での充実さが大切です。

 

昨今の湾岸エリアのタワーマンションは海外からの投資マネーが流入しているため、管理組合が健全に機能していないケースもあります。住まいというより投資対象として見ている人が多くなると、災害時の対策は手薄になり、ひいては次第に資産価値を落としていく可能性があります。

 

近々発生するといわれている南海トラフ巨大地震。その対策が資産価値を左右するため、防災という視点でタワーマンションの購入を吟味する必要がありそうです。

 

 

長岡 理知

長岡FP事務所

代表