タワーマンションの上層階で体験する激しい揺れ、そして災害時の閉じ込めの危険性……これは単なる想定ではなく、現実に起こり得る問題です。本記事では、Kさん夫婦の事例とともに防災の視点から、タワーマンション購入にあたっての重要なポイントについて長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。※相談者の了承を得て、記事化。個人の特定を防ぐため、相談内容は一部脚色しています。
埋立地にそそり立つ「安全地帯」?…やがてくる巨大地震。世帯年収1,520万円・31歳パワーカップルがまだ知らない“1億円超湾岸タワマン”の「想像を絶する恐怖」【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

「長周期地震動」とは?

大きな地震で生じる周期(揺れが1往復するのにかかる時間)が長い大きな揺れのことを長周期地震動といいます。長周期地震動は遠くまで伝わりやすいという性質があり、震源地から何百キロも離れた場所を長く揺らすのが特徴です。特に高層ビルなど高い建物ほど長周期地震動によって揺れが大きくなります。

 

タワーマンションを激しく揺らす原因はもうひとつ、建物の「固有周期」が関係しています。

「固有周期」とは?

「固有周期」とは、建物が一方に揺れて反対側に戻ってくるまでの時間のことです。振り子にたとえると、片方に揺れて反対側に到達するまでを指します。単位は秒です。たとえば30階建ての建物であれば、固有周期は4秒から7秒。高さが高くなるほどこの固有周期は大きくなり、建物の構造によって同じ高さでも周期が異なります。

 

建物にはそれぞれの固有周期があり、地震の周波数とその建物の固有周期が一致すると激しい揺れが現れます。その揺れは高層建築物ほどなかなか収まらず、長く揺れ続けるのです。タワーマンションの上層階では家具がブランコのように室内の端から端へとものすごいスピードで往復することになります。地上では地面に立っていられるほどの震度でも、上層階ではテレビが横から飛んでくる状態です。これでは怪我は避けられません。ちなみに建物ごとの固有周期は、建物設計の際に行われる構造計算等により明らかになっている場合があります。

 

上の階ほど揺れる

このように、高層化している現代の日本社会の地震は「地盤の揺れの大きさ=震度」だけでは被害を想定できなくなっています。同じ震度でも建物の高さによって揺れ方が違い、被害にも差が生まれます。地盤を揺らす大きさだけではなく、「建物の揺れの周期」が影響しているということを知ることが重要なのです。タワーマンションに住んでいるなら、「長周期地震動が発生したら上の階ほど揺れる」ととっさに思い出せるだけでも被害を防ぐ可能性が高まります。

 

2023年5月から、緊急地震速報に長周期地震動階級を追加するようになりました。長周期地震動階級は4等級にわかれ、揺れの危険度を表しています。厳密にはビルごと、フロアの高さごとに揺れ方が違うため、ひとつの目安として考えるべきでしょう。