
海のそばのタワマンは危ない?
「値段は妥当だと思うけれど、なぜ海のそばなの? 実家が津波で流されたのに」と妻Mさんがいいます。「ちょっと理解できないな」首をかしげるMさんにKさんは答えます。
「晴海は東京湾の中だし、湾の中は津波が拡散するのでそれほど危険はないよ。盛土で高く作られていて比較的安全だと思う。それにタワーマンションの上に住めば津波や高潮が来たとしても命の危険にさらされることもないだろう。津波避難タワーに住んでいるようなものだから」
夫Kさんは湾岸エリアのタワーマンションこそが安全だと考えているようです。木造家屋が密集している地域では大火災が起きる可能性が高いし、戸建ては洪水や土砂崩れがあったら全壊してしまうとも考えています。それと同時に職場への通勤の利便性が非常に高いところが気に入っています。また、夫Kさんは海を見て育ったので、いつも海を感じる場所で暮らしたいとも思っています。
妻Mさんとしてはタワーマンションには憧れがありますが、強烈な津波被害の体験を持つ夫の判断がよく理解できません。1億円以上の物件を買って災害があったとき、資産価値はどうなるのでしょうか。妻Mさんにとって、タワーマンションは終の棲家ではなく、ライフステージのどこかで売却しセカンドライフに備えるべき「資産運用」のひとつと考えています。
そこで資産運用という側面も含めて、タワーマンションの災害問題をFPに相談することにしました。
FPからのアドバイス
FPが指摘したのは、夫Kさんの災害への思い込みでした。自分の強烈な体験から、災害は「津波による家屋流失」のことだと思い込んでいるのかもしれません。だからタワーマンションは戸建てよりも津波に強いと考えてしまうわけです。
「確かにタワーマンションは津波で流失することはありませんが、戸建てにはない被災の形があります。それが“揺れの強さ”と“閉じ込め”です。建物は確かに頑丈にできているので強い揺れで倒壊することはないでしょう。しかし地上よりも大きく建物が揺れ、怪我をするかもしれません。また、エレベーターが止まってしまえばフロアに閉じ込められ、食料不足や医薬品不足、ひいては急病でも救出してもらえないという事態もありえます」
まずは“揺れの強さ”について考えていきます。タワーマンションの地震被害を考えるとき、先ほど述べた「長周期地震動」に加え、「固有周期」というふたつの言葉を覚えておく必要があります。