S造(鉄骨造)のメリット
先述の通り、S造は鉄骨のみを使用して骨組みを構成します。RC造やSRC造よりもシンプルな構造になるため、以下のようなメリットが存在します。
・品質が安定しており施工ミスが起こりにくい
・RC造やSRC造と比較するとコストが低い
・高層化に適している
品質が安定しており施工ミスが起こりにくい
先述した通り、S造では柱や梁、屋根などの構成要素を工場で製作し、現場で組み立てる「プレハブ工法」が採用されています。この方式では、工場で高精度な加工が行われるため、部材の品質が安定しやすく、現場での施工ミスが起こりにくいことが特徴です。
RC造やSRC造は、コンクリートを流し込む工程が職人の技術に依存しやすく、精度にばらつきが生じることがあります。W造は主に木材を使用するため、施工が比較的簡単で、熟練した職人がいれば高品質な仕上がりが期待できます。しかし、木材の性質上、湿度や気温の影響を受けやすく、部材の加工精度や現場での組み立てにばらつきが生じる可能性があります。
RC造やSRC造と比較するとコストが低い
S造はRC造やSRC造と比較すると、建設コストを大幅に抑えることができます。S造は鉄骨を主な構造材として使用するため、RC造やSRC造のように大量のコンクリートを必要としません。コンクリートは製造過程が複雑で、運搬や現場での施工にも多くの時間と費用がかかりますが、鉄骨は工場で加工された部材を現場で組み立てるため、材料費が抑えられます。
また、RC造やSRC造と比べ工期も短くなることから、工事にかかる人件費も抑えられます。
しかし、W造(木造)よりは鉄骨の材料が高価なので、コスト面のみで検討する場合はW造のほうがさらに低コストでの建設が可能です。木造は鉄骨に比べて耐久性や耐火性が劣るため、コストとのバランスを確認する必要があります。
高層化に適している
鉄骨は非常に強度が高い上に軽量であるため、高層建築物において、基礎部分の負担を軽減することができます。RC造やSRC造は耐久性や防音性に優れていますが、コンクリートを使用するため、重量が増してしまいます。高層化を行う場合、重いコンクリートを使用することは、基礎部分への負担を大きくし、結果としてコストや施工の難易度が増す原因となります。
W造は軽量であり、低層の住宅や小規模な建物には適していますが、高層化を行う場合には耐震性や構造的強度が十分ではありません。そのため、鉄骨造やコンクリート造に比べて採用されることは少ないです。
S造(鉄骨造)のデメリット
S造のメリットを解説しましたが、以下のようなデメリットも存在します。
・風や潮など自然の影響を受けやすい
・防音性が低い
・断熱性や耐火性が低い
風や潮など自然の影響を受けやすい
S造は鉄骨のしなやかさゆえに、地震や強風などの自然の力を受けた際に揺れやすい性質があります。RC造やSRC造は、コンクリートの重さによって安定性があるため、S造に比べ自然の影響を受けにくい特徴があります。とはいえ、S造はW造と比べると躯体の強度自体は高く、しっかりとした耐震性を持っています。さらに、免震構造や耐震補強を採用することで、S造の耐震性をさらに高めることが可能です。
また、S造の鉄骨は錆びやすいため、湿度が高い地域や海沿いなど、潮風の影響を受けやすい場所での使用には防錆加工や定期的なメンテナンスが必要です。W造は湿気による腐食が課題となる場合がありますが、耐潮性の点では鉄骨よりも有利なケースもあります。
防音性が低い
S造は構造上鉄骨が音を伝えやすい性質を持つため、防音性能がRC造やSRC造では厚いコンクリートの壁や床が音を遮断するため防音性に優れていますが、S造はRC造やSRC造と比較し壁や床が薄いため一般的に防音性では劣ります。建物内部の音や外部からの騒音が鉄骨を介して響くこともあり、静かな空間を求める住居やオフィス用途では防音対策が必要になります。
RC造やSRC造ではコンクリートの厚みがある上に密度が高く、音が伝わりにくいため防音性に優れています。W造については、木材自体が音を吸収しやすい性質を持つため、S造よりは静音性で優れていますが、防音材を併用しない場合には音漏れが発生しやすくなります。
断熱性や耐火性が低い
S造は鉄骨が熱を伝えやすく、火に弱い性質を持つため、RC造やSRC造と比較して断熱性や耐火性が低くなります。RC造やSRC造では、コンクリートの熱伝導率が低いため、火災時や外気温が建物内部に影響を与えにくいのに対し、S造では追加の断熱材や耐火被覆が必要となります。
W造については、木材自体が断熱性に優れているため、断熱性能ではS造より高いですが、耐火性においては木材の燃焼性が課題となります。S造では最新の耐火被覆技術や高性能な断熱材を採用することで、これらの欠点を補うことが可能であり、用途に応じた適切な対策が重要です。
