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サブリース新法とは、2020年12月15日に施行された「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」の通称で、サブリース契約におけるオーナー側を保護するための法律です。サブリース新法によりサブリース会社の誇大広告等が禁止されたものの、悪質な会社との契約を避けるためには、オーナー自身もしっかりサブリース新法の内容を確認しておく必要があります。なお、本来は、オーナーと不動産会社との間で結ぶ一括借り上げの契約をマスターリースといい、不動産会社と入居者の間で結ぶ転貸借契約のことをサブリースといいますが、本コラムではいずれもサブリースとして表現しています。サブリース新法の概要やポイント、重要事項説明の扱い、契約時にオーナーが注意すべきポイントを解説します。

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サブリース新法とは?制度の概要

(画像:PIXTA)
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そもそもサブリースとは、オーナーが自分の物件をサブリース会社に一括で貸し出し、サブリース会社が入居者に転貸する仕組みのことをいいます。

 

サブリース契約をすることによって、空室や家賃滞納が発生しても、サブリース契約上の家賃を得ることができるといったメリットがあります。しかし、契約後にサブリース会社から一方的に家賃減額を求められるなどのトラブルも生じています。

 

そこで、国はオーナーとサブリース会社との間で結ばれる一括借り上げ(転貸)契約の適正化を目的とした法整備を進め、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(通称:サブリース新法)」が2020年6月に成立、同年12月15日に施行されました。

 

この法律では、サブリース契約の透明性を高めるため、次の4つの主要ルールが定められています。

 

・オーナーへの重要事項説明の義務化

・誇大広告の禁止

・不当勧誘の禁止

・違反時の罰則規定の導入

 

これらのルールについて詳しくは後述しますが、サブリース契約に関する情報提供や勧誘方法の適正化が求められるようになり、オーナーが不利益を被るリスクを減らすことが期待されています。

サブリース新法が施行された背景

サブリースに関しては、以下のようなオーナー側の予期しないトラブルが各地で発生していました。

 

・契約の勧誘時に「長期間家賃保証で安心」と説明されたにもかかわらず、途中で大幅な賃料減額を求められる

・契約期間中にもかかわらず一方的にサブリース契約が打ち切られる

・将来の収支見通しや契約条件について十分な説明がないまま契約させられる

・サブリースでの運用を前提としたアパート建設の契約申し込み後にキャンセルしようとした際にも契約金が返金されない

 

こうした事態を受け、オーナーとサブリース会社との情報格差を是正しトラブルを未然に防ぐために制定されたのがサブリース新法です。

 

この法律施行と同時に、不動産業界の健全化策として賃貸住宅管理業者の登録制度も創設され、サブリース業者に対する規制強化と業界全体の信頼性向上が図られています。

サブリース新法の主な内容と制度のポイント

サブリース新法では主にオーナー保護のため、広告から勧誘、そして契約説明に関するルールが定められています。具体的には、「誇大広告の禁止」、「不当勧誘の禁止」、「契約締結前の重要事項説明義務」、「違反時の罰則」といった規制が含まれ、オーナーが適切な判断をできるようにしています。

 

以下からは、これらの内容を詳しく解説します。

 

誇大広告等の禁止

不動産業界において、誇大広告はサブリース新法が施行される前から禁止されていましたが、あくまでも宅建業者を規制対象としたルールで、宅建業者ではないサブリース会社は規制対象外となり、直接的な規制が不十分であることが問題視されていました。

 

サブリース新法によって、宅建業者ではないサブリース業者による誇大広告表示も規制対象となり、新聞やチラシ、テレビCM、雑誌、インターネット(Webサイト)やSNSなど、あらゆる媒体で実際の契約条件よりも著しく有利に見せかける表示や事実と異なる宣伝を行うことが禁止されています。

 

例えば、「安心の30年家賃保証」「契約期間中は家賃収入が一切下がりません」など、将来家賃が減額される可能性を無視した表現で広告宣伝することは認められません。

 

不当な勧誘等の禁止

不当な勧誘とは、サブリース契約を勧誘する際に重要な事実を故意に伝えなかったり、事実と異なる説明をしてオーナーの判断を誤らせたりする不適切な勧誘行為をいい、それらも禁止されました。

 

例えば、将来家賃が下がるリスクや契約期間中でもサブリース会社から契約解除される可能性、原状回復や修繕費用がオーナー負担であることなどの不利な情報を隠したり、虚偽の説明を行ったりすることも禁じられています。

 

契約締結前の重要事項説明義務

サブリース契約でも宅地建物取引と同様に、契約締結前にサブリース業者はオーナーへ重要事項説明書を交付し、サブリース契約上の家賃や契約期間、更新・賃料改定の条件、契約解除条件、転貸の範囲、維持管理や費用負担の範囲など契約の要点を説明する義務があります。

 

具体的には、契約期間中や更新時に賃料が減額される可能性や、契約期間中でもサブリース会社から契約解除される可能性、原状回復費用や大規模修繕費用は原則オーナー負担であることなど、リスクや負担に関する事項が書面で示されて説明されます。

 

また、「契約締結前に重要事項の説明が行われ、契約時には書面が交付される」こともオーナーに事前に説明される必要があります。

 

サブリース新法に違反した場合の罰則規定

サブリース新法に違反した場合、罰則も定められています。

 

例えば、不当な勧誘禁止に違反すると「6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金」もしくはその両方が科される可能性があります。また、誇大広告の禁止や重要事項説明義務を怠った場合にも罰金などの制裁が課されます。

 

さらに、行政処分としてサブリース会社への業務停止命令が出されることもあります。

サブリース契約時に押さえるべきポイント

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サブリース契約では、勧誘から契約締結後まで各段階で注意すべきポイントがあります。以下では、勧誘時・契約締結時・契約後の運用中に押さえておきたいポイントを解説します。

 

サブリース契約の勧誘を受けるとき

サブリース契約の勧誘時に「絶対に損しない」「家賃はずっと下がりません」といった極端に有利な話ばかりをされる場合、サブリース新法に反し違法な勧誘行為となる可能性があります。

 

オーナーはこのようなセールストークを鵜呑みにせず、「将来家賃が下がる可能性は?」「解約や更新の条件は?」など疑問点を遠慮なく質問し、十分な説明を受けるようにしましょう。

 

サブリース契約を締結するとき

契約書にサインする前に、サブリース業者から交付される重要事項説明書を受け取り、その内容について担当者から説明を受けましょう。

 

重要事項説明書にはサブリース契約上の家賃や手数料、賃料改定の条件、契約期間・更新条件、解約時の違約金負担、オーナーの費用負担範囲など契約条件の要点が網羅されています。オーナーにとって不利益となりうる条件(例えば「数年後に家賃見直しあり」「原状回復費用はオーナー負担」「一定期間は解約不可」など)が明示されているので、契約前にしっかり確認しましょう。

 

リスク説明が不十分なまま契約書への署名を求められた場合は違法です。

 

サブリース契約後・運用中

契約後にサブリース会社から家賃減額の打診があった場合、契約時の説明と異なる条件を強引に押し付ける行為はサブリース新法上問題となる可能性があります。

 

契約内容に基づかない一方的な条件変更要求には応じる義務はなく、まず契約内容を再確認しましょう。不安な場合は消費生活センターや弁護士など専門家に相談しましょう。

重要事項説明が不要となるケースはある?更新時の扱い

契約内容に変更を伴う更新であれば、新法に基づき再度重要事項説明書の交付と説明が義務づけられます。

 

一方、契約内容を変えず契約期間だけを延長する更新(条件据え置きの更新)の場合は、重要事項説明は不要です。これは、契約内容がまったく同一で期間だけが延長される場合、新たに説明すべき重要事項が増えないと考えられるためです。

 

ただし、オーナーとしては更新のタイミングでも契約書の条項を再確認し、口頭で「条件は変わりません」と言われた場合でも念のため契約書面で条件据え置きであることを確認することが望ましいといえるでしょう。

サブリース契約を検討・運用するオーナーが気をつけるべきポイント

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サブリース契約を検討・運用するオーナーは、サブリース利用の必要性やサブリース会社の信頼性の確認、契約条件の厳密な把握、不当勧誘への対応など、幅広いポイントに気をつける必要があります。以下では、契約検討前から運用中までの具体的な注意点を解説します。

 

サブリースが本当に必要か検討する

サブリース契約には空室リスクの軽減や管理負担の軽減といったメリットがあります。しかし、手数料を支払う分、手取り収入が目減りしたり、オーナー側から解約しづらくなったりするというデメリットもあります。

 

集金代行など他の管理委託方式でも不動産運用は可能なので、契約前にサブリースが本当に自分の投資計画に適しているか、よく検討しましょう。

 

例えば、賃貸需要が強く空室が発生したとしても比較的すぐに次の入居者が入ることが想定されるような物件であれば、サブリース契約よりも他の管理委託方式を選択する方が収益を最大化できるケースも多いです。周辺エリア全体の賃貸需要の大きさや競合となる周辺物件との条件比較なども行い、購入検討する物件のエリアにおける優位性や空室となった場合に想定される賃料なども十分に確認をした上で、契約を検討する必要があります。

 

サブリース会社の実績や信頼性を調べる

サブリース契約を任せる会社の経営状況や管理実績は必ず事前に調べておきましょう。

 

サブリース新法施行に伴い賃貸住宅管理業者の登録制度が導入され(管理戸数200戸以上は登録義務、未満は任意登録)、登録業者であれば一定の信頼性が担保されます。国土交通省の業者検索システムで候補のサブリース会社が賃貸住宅管理業者として登録済みか確認し、Googleマップ等での口コミや評判も参考にするといいでしょう。

 

複数のサブリース会社を比較検討する

家賃保証額や手数料率、管理サービスの範囲、トラブル発生時の対応などは会社によって異なります。最初から一社に絞らず、複数の会社を比較検討しましょう。

 

提案の内容やその説明の根拠、信ぴょう性などをしっかり見極めることが大切です。

 

契約条件を隅々まで確認する

サブリース契約は一度結ぶと途中解約が難しいため、契約前に契約期間や賃料・手数料の額と見直し条件、更新の条件、中途解約時の違約金、オーナー負担となる費用項目など重要な条件をすべて確認しましょう。

 

提示された重要事項説明書や契約書の条文を読み飛ばさず、不明点は遠慮なく質問することが大切です。

 

違法な勧誘や契約には適切に対処する

サブリース会社が新法に基づく説明・手続きを怠ったり、禁止行為(誇大広告や不当勧誘)を行っていたりした場合は、適切に対応しましょう。

 

契約前であれば契約を見送り、必要に応じて国土交通省の「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」や消費者庁などに報告・相談することができます。契約後でも違法・不当な要求には応じる義務はなく、早めに信頼できる専門家や行政の相談窓口に相談しましょう。

 

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