
現実から逃げるように終えた就活の結果
ただ、漫然といろいろな会社の説明会を覗くうちに、こんなわたしにも興味が持てる業界がポツポツと出てきました。それは、広告業界と出版業界です。学生時代のわたしは、放課後はずっと図書館に通いつめるほど本を読むのが好きで、音楽を聴いていても歌詞ばかり読んでいるような人間だったので、「言葉の力で人を動かす仕事」に惹かれたのだと思います。
しかしあろうことか、ここで胸を高鳴らせるわたしを強く引き止めたのは、「自分は無能だからどうせ無理」という、「自分」に対する負の思い込みでした。
「そもそも広告業界や出版業界に内定が出るのは、トップレベルの大学の学生が9割だろうな。わたしなんか受けるだけ無駄だよね……」うだうだ悩んだ挙句、結局、1社もエントリーすらしないまま、憧れの業界をあきらめてしまったのです。「憧れの会社に落とされる」という現実を受け止めるのが怖いがあまり「自分から受けない」という、なんとも情けない選択でした。
就活を始めてから半年が経過し、不採用になった会社は100社超え。周りの友達が続々と内定を獲得して就活を終える中、わたしにはまだ1つも内定がありませんでした。
「ヤバい。もうどこでもいいから内定をもらわないと……」そこで、とにかく採用人数が多かったり、あまり知名度がなくてライバルが少なさそうな小規模の会社や地方の会社に絞って、ただただロボットのように、大量エントリーを続けたのでした。
そうして季節が秋に差し掛かったころ、なんとか地方の会社から営業職の内定を獲得しました。同級生は誰も知らない、地元でお酒を販売する小さな会社です。
これはあとから知ったことですが、「そもそも採用の募集をかけてもほとんど応募がこないので、応募すればだいたいの人が内定する」なんて事情があったよう。確かに、この会社の面接で主に聞かれたことといえば、「お酒、好きなの?」「ウチの会社に通える範囲に住んでる?」「車で営業するので普通免許ありが採用条件だけど、入社までに取れる?」など、実務に関することばかり。
逆に「なぜウチじゃないとダメなのか」とか「10年後のキャリアプランは?」など、就活中のわたしがずっとろくに答えられなかった「理想の未来」に関する質問をされなかったことで、なんとか切り抜けたに過ぎませんでした。
なにはともあれ、喉から手が出るほど欲しかった「内定」という2文字をメールの中に確認したとき、喜びというより安堵の感情で、床にへたりこみました。その1社から内定をもらうや否や、「本当にやりたい仕事かどうか」なんて深く考えることもなく、わたしは逃げるように就職活動を終了。
こうして「社会=地獄」「自分=無能」という思い込み二大巨頭を握りしめ、ブレーキばかり踏み続けたわたしの就活は散々たる結果に終わりました。