営業成績が振るわない、努力しても空回りばかり……。そんな悩みを抱えている人は少なくないでしょう。多くの人が、トークスキルや商品知識の向上にばかり目を向けがちですが、本当に重要なことは別にあるかもしれません。本稿では、土谷愛氏の著書『適職はどこにある?』(大和出版)より一部抜粋・再編集し、新たなスタートで苦戦する人に向けたヒントを探ります。
「売れっ子営業マン」が放った一言に目からウロコ…「営業成績ビリ」の人が見落としている、致命的な欠陥 (写真はイメージです/PIXTA)

転職1年目、営業ビリで再出発

地方の会社へ車で通勤していた毎日から一変し、都心のオフィスビルへぎゅうぎゅうの満員電車に揉まれながら通勤する日々が始まりました。 

 

「よぉし、ここで今度こそ絶対に成果を出して稼いで、20代で奨学金を返し切る!」 そう意気込んで入社したものの……1社目とはまったく違う営業スタイルに、わたしは早々に出鼻をくじかれてしまったのです。 

 

前職は既存客へのルート営業だったので、新たに自社を知ってもらう努力は不要。すでに取引があるので、ある程度「買ってもらえること」は決まっていて、あとは「例年よりも多く買ってもらえるかどうか」を考えて営業に向かっていました。 ところが2社目では、まったくの新規客への営業がミッションに。それも、名もなきベンチャー企業のサービスですから、簡単に契約など取れません。 

 

現実は厳しく、またしても成果ゼロ、営業ビリからのスタートとなりました。それでも理想の未来のため、あきらめるわけにはいかないので、 「なんとか自分のこと、自社のことをうまく伝えなければ」 そう考え、売れている営業の先輩の営業トークを録音。何百回と聞きまくって頭に叩き込んで商談に出かけてはいくものの、見事なまでに撃沈して帰ってくる日々が続きました。 

 

「話の内容」以前の問題

しかし、ありがたいことに、こんなわたしを助けてくれる仲間がいました。何件商談に行ってもなかなか売れないわたしの状況を察し、営業部の先輩たちが「商談のロールプレイング特訓」をしてくれることになったのです。 毎朝8時にチームの先輩方が2人ずつ交代で出社してくれて、わたしの商談を見てフィードバックをもらい、改善してまた翌日に活かす……という特訓の日々です。 先輩方への感謝もあり、なんとかして営業トークを身につけて一人前にならなくちゃ!といっそう気合が入りましたが、現実は思い通りにいきませんでした。 

 

「ドアノックして入ってくるときの挨拶がちょっと暗すぎるかな……」 

「話し方が淡々としすぎてて、ロボットが話してるみたい。もっと抑揚つけよっか」 

「ちょっと話に間がありすぎ。お客さんは忙しいし、時間ばっか気になっちゃうよ」 

 

お気づきでしょうか。まず「商談の内容」以前に「話し方」の指摘の嵐です。 

 

先輩方が丁寧にフィードバックをしてくださるものの、1つ気をつけたら他のことが抜け、またそちらに気を取られて別の点が抜け……という状態で、わたしはいっこうにスムーズに話せるようにはなりませんでした。もう情けなくてたまりません。 

 

なかなか進まないので、いったん話し方には目をつぶってもらっても、 

 

「最初に用件を言わないと、こっち(お客側)も話を聞く姿勢がつくれないよ」 

「話が長すぎて、なにを言いたいのか全然わからない」 

「こちらの質問に対する答えがズレていて、よけい混乱しちゃうかも」 

「そもそものサービス説明が間違ってる。商品のこと、覚え直そう」 

「相手の反応も待たずに一方的に喋りすぎだから、まずは対話をするのを心がけよう」 

 

こちらも、もはや書ききれないほど課題は山積み。忙しい先輩方の時間をすでに何十時間も使わせているのに、同じことを何度も指摘させてしまい、まったく成長を見せられない自分に悔しさが募ります。 

 

1つひとつできるようになっていこうね、と言ってくれる優しさに、逆に怒鳴られたほうがまだマシかもしれない……と苦しくなっていきました。