社会に出た時点で金銭的にマイナスからのスタートとなってしまう奨学金。学歴を手に入れることができる一方で、ライフプランにも大きな影響がおよびます。理想のライフプランを叶えるには、目標から逆算して仕事を選ぶことで、今まで見えていなかったさまざまなことに気づくかもしれません。本稿では、土谷愛氏の著書『適職はどこにある?』(大和出版)を一部抜粋・再編集し、仕事選びのヒントを探ります。
婚約破棄の理由にも…奨学金450万円・20代女性がおびえる「完済年齢」 (写真はイメージです/PIXTA)

夢の期限が決まるとき

ある日、友達とカフェでおしゃべりしていたとき、なにげなく話題にのぼった「結婚予定の相手に借金があることが発覚し、婚約破棄をした先輩の話」を聞きました。

 

「30歳くらいで結婚できたらいいなぁ」とのんきに思っていたわたしは、その話を聞いて猛烈に焦ってしまいました。なぜなら、わたしにも「奨学金」という名の借金が450万円あったから。それも、社会人スタートと同時に毎月約2万円ずつの返済が始まったばかり。まだほとんどの返済が残っていて、このままのペースなら40代での完済予定です。

 

借金があると結婚がしにくいらしい→40代で借金完済するわたしは40代まで結婚ができない→結婚や出産などライフイベントの難易度が上がる……?

 

今でこそツッコミどころも多々ありますが、恐ろしいほど無知だったわたしの脳裏には、なんとまあそんな単純な図式が浮かんだわけです。

 

私のなりたい姿は、明るくドーンと構えていて、大変なときでも落ち着いて対処し、太陽のように愛情を注げるような人……「肝っ玉母ちゃん」です。しかしこの時点で「なんとしても母親になりたい!」までの熱量はなかったのですが、将来的な選択肢としてはその道も考えていたので、「できれば30歳くらいで結婚を」と想像していました。

 

理想通りのライフイベントを迎えるためには、一刻も早く奨学金を繰り上げ完済しておいたほうがよさそうだ。もし30歳で結婚を目標にするなら、20代のうちに450万円を返し切る必要がある。そうして「コツコツ450万円稼げればいいか」というのんびり目標が、突如「あと数年で450万円を稼ぎ切らねば」と期限付きの目標にはっきり変わったのです。わたしの20代はとにかく全力で働いて、目標金額を稼ぐ期間になりそうだぞ……。

 

わたしの理想の未来=20代で450万円の貯金+肝っ玉母ちゃん

 

ノートに書いた目標を修正しながら、わたしは唾をゴクリと飲み込みました。気を取り直して、ともかく期限までに「欲しいもの」と「なりたい姿」の両方をゲットできる仕事を具体的に考えていかねば。もちろん手段としては仕事以外でもいいわけですが、どうせ期限までに目標のお金を稼がなければいけないのなら、その働く時間で「なりたい姿」もめざせたほうが一石二鳥です。

 

というわけで、どんな仕事をすれば理想の未来が叶うのか、具体的な仕事を絞っていくことにしました。まず、わたしの「理想の未来」に必要なのは、次の4つの要素だと考えました。

 

〈欲しいもの:奨学金の返済分〉


1.20代で450万円の貯金

 

〈なりたい姿:肝っ玉母ちゃんに必要なスキル〉


2.自分と違う価値観の人を理解し、受け入れられる力(人間理解力)

3.物事をポジティブに解釈する力(解釈力)

4.物事を一歩引いて見つめて、論理的な解決策を出せる力(思考力)

 

これらを手に入れられそうな仕事の条件はなにか、1つずつ検索をかけたり、実際の求人などを見比べながら、コツコツと整理していくことにしました。まだこの時点では「転職しよう」と決めずに、そもそも「今の仕事を続けるか、転職したほうがいいか」まずはっきりさせよう!くらいに思いながら。