長寿化が進むなか、いつから老後かは人それぞれ意識が違うようです。ただタイミングが違っても、収入がガクンと落ちる老後を見据えて入念な準備が必要なのは、日本人全員に共通。また準備万端と余裕綽々でいる人であっても、思わぬ事態に計画が台無しになるケースも珍しくないようです。
老後なんて余裕だな…〈貯金3000万円〉〈年金月31万円〉〈借金ゼロ〉の65歳夫婦、完璧な人生プランが突如崩壊。原因は35歳長男の「驚きの要求」 (※写真はイメージです/PIXTA)

老後の生活は盤石のつもりが…想定外の出費で大ピンチ

しかし、どんなに用意周到に老後の準備をしてきたからといって、「絶対安泰」とはいい切れないところが難しいところです。想定外の老後の出費としては、よく知られたものが3つ。

 

■医療費・介護費

高齢になると、病気や怪我のリスクが高まり、医療費が増加します。特に、入院や手術が必要になると、自己負担額が大きくなることがあります。たとえば、75歳以上の高齢者の入院費用は、1回あたり約50万円以上になることが一般的です。また、介護が必要になると、介護サービスの利用料や住宅改修費用が発生し、これも大きな負担となります。

■住居費

定年後に自宅をリフォームする必要が生じることもあります。バリアフリー化や設備の更新など、これらの費用は数百万円に達することも珍しくありません。さらに、持ち家の修繕積立金が急増することもあり、これが家計を圧迫する要因となります。

 

■葬儀や墓じまいの費用

高齢の親が亡くなると、葬儀費用や墓じまいにかかる費用が発生します。これらの費用は葬儀の規模や地域によって異なりますが、数十万円から数百万円に及ぶことがあります。

 

金子さん夫婦の場合も、よくあるパターンではありませんが、想定外の大きな出費に軌道修正を迫られたといいます。きっかけは、35歳になる長男から「父さん、母さん、お金を貸してくれないか?」という頼み事。

 

真面目が取りえの長男からのお願いとあって、真剣に話を聞く金子夫婦。まずは理由を聞かず「いくら必要なのか?」と尋ねると、「1,000万円」という思いもしない金額に「思わず震えました」とふたり。

 

住宅を新築等する場合、親から援助を受けるケースも珍しくないでしょう。省エネ等住宅の場合は1,000万円まで、それ以外の住宅であれば500万円まで贈与が非課税となります。

 

――銀行から1,000万円借りるよりも絶対に得だと思うんだ

 

長男のいうことには一理あります。しかし、次男や三男にも同じように援助したら、老後資金が吹っ飛んで行ってしまう。しかし子ども、さらには孫のためといわれると、弱いのが親というもの。長男の申し入れ通り、1,000万円の援助をすることにしたといいます。

 

――援助する代わりに、介護が必要になったらよろしくと伝えました。あと資金援助のことは、次男や三男にも伝えてあります。あとで兄ばかりずるいと面倒なことになるのは嫌なので

 

老後であっても「子どものため」、さらには「孫のため」の出費はかさむもの。子育てを終え、これからは夫婦水入らず……というのは難しいようです。

 

 

[参考資料]

公益財団法人生命保険文化センター『生活保障に関する調査 2022年度』

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)』

国税庁『No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税』