
結婚40年目の悲劇…10歳年下の妻を亡くした70歳男性
佐藤憲一さん(仮名・70歳)。30歳のときに8歳年下の妻と結婚し、老後の面倒を妻に任せられると安心していました。しかし、妻のくも膜下出血による急逝により、その安心は一瞬にして崩れ去りました。
妻の死後、佐藤さんは日常生活の基本的なことさえわからず困難に直面します。料理は何ひとつつくることができず、毎食、お弁当などを買ってくるしかありません。最初は洗濯機を回すことができず、洗濯物はたまっていくばかりだったといいます。洗濯機で洗ってはいけない衣類を洗ってしまい、台無しにしてしまったことも数えきれず……。
家事全般ができないことに加えて、すべてを妻にまかせていたので、当たり前のことができません。預金通帳や印鑑の場所がわからず、年金を引き出すのにも苦労しました。お風呂にはいったあと、自分の下着がどこにしまってあるのかもわからず右往左往。体を冷やし風邪をひいてしまいました。ゴミ出しルールがわからず、ゴミ袋はたまっていくばかり。今や妻が生きていたころの清潔な住まいの面影はなく、誰から見てもゴミ屋敷……。
――情けない、妻がいないと何もできないとは……
そう肩を落とす姿を近所の人が目撃していました。
遠方に住むふたりの息子に実家がヒドイ惨状になっていることを知らされたのは、ゴミ屋敷化してしばらく経ってから。異常事態を知り、実家に駆けつけた子どもたちは、何とも無残な父親の姿を目にします。
チャイムを鳴らしても応答はなし。念のため預かっていた合鍵で家のなかに入ると、ものが腐ったような鼻につく臭いが充満しています。ゴミをかき分けて進んだ先の和室に、空の一点を見つめ座っている佐藤さんがいます。ひげも髪も伸びっ放しで、まるで仙人のような風貌。痩せ細り、目には生気がありません。
――一体どうしてしまったのか……
やっと息子たちの存在に気がづいた佐藤さん。すると「母さんのご飯が食べたい」「なんで俺より先にいっちゃったんだ」とポロポロと泣き出したといいます。