昨年、三菱UFJ銀行で発生した貸金庫からの巨額窃盗事件は、多くの人に衝撃を与えました。相続が発生した場合、貸金庫の中身は相続財産となりますが、この事件を踏まえ、相続手続きにおける注意点やリスク管理について改めて確認する必要があるでしょう。本記事では、Aさんの事例とともに貸金庫の相続手続きについて、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
年金月30万円だった元大企業部長・76歳亡父の「銀行の貸金庫」…中身を見た40代息子たちが覚えた強烈な違和感「老人ホームで暮らす母にはいえない」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

家族に内緒のマンションには…

父親は家族に内緒でマンションの一室を購入していました。Aさんと弟は事前に管理会社に連絡しておいたため、部屋の中を確認することができました。2人が案じていたような誰かが住んでいる気配はありませんでしたが、家具やテレビなどは揃っていました。

 

「さっぱりとはしてるけど、こんな机やテレビなんかも相続財産になるのかな?」

「おいおい、面倒くさいなぁ。家にも書斎があるのになんでこんな部屋なんか買ったんだよ」

「昔、誰かと住んでたりして」

「やめろよ! 相続税納めたら時計も含めてとっとと売っちゃおうぜ」

 

家具や家電も相続財産等して評価をする必要があります。相続税評価方法は、その家財道具の価値によって異なりますが、1個あたりの価値が5万円以下の動産については、「家財一式」や「家具等一式」といった形で、まとめて評価を行うことができますが、一個あたりの価値が5万円超であれば個別に評価をすることとなります。時間の経過とともに価値は減るため、一般的な家具・家電であれば5万円を超えるものはほとんどないでしょう。

 

なお、相続が発生した場合は、相続人全員で遺産分割協議を行いますが、Aさんたちは母親が認知症ということと遺言書もありませんでしたので、法定相続分でわけることにしました。

 

2人ともそれぞれがすでにそれなりの資産を形成していたことと仲がよかったこともあり、トラブルはありませんでしたが、長寿化が進むなか、被相続人や相続人が認知症となっていたり、相続でのトラブルが発生したりするケースはよくあります。遺言書の作成や、家族によって財産管理を行う家族信託などは今後ますます重要になってくるでしょう。
 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表