入居者やスタッフに悩まされる日々
入居前、住み慣れた我が家を出るのは悲しいけれど、期待感でいっぱいだった菊池さん。しかし入居早々、想像していなかったことが。初日から気になったのは入居者たちの話し声。食堂や談話室、廊下など、どこも賑やかで活気に満ちていましたが、逆に、落ち着ける、静かな場所はありません。また隣の部屋との壁は厚いものの、トビラのほうからは音が漏れ伝えてきます。賑やかな声が自室にいても聞こえてくるのです。
また楽しみにしていたガーデニングサークルも期待外れでした。指導してくれるスタッフは特に知識があるわけではないことは明らかで、「土を触るのは良いことです」」と、どちらかといえば、リハビリや健康増進を目的としたもの。本格的にガーデニングを楽しんでいた菊池さんには物足りないものでした。そのようなサークルだったので話があう入居者もおらず、サークル活動は1回参加しただけで、出席しなくなったといいます。
また要介護の入居者も多いからか、スタッフの対応はどこか子どもを相手にするような雰囲気。「菊池さん、いっぱい食べましたね」「菊池さん、今日も頑張りましょうね」……話しかけられるたびに気分が暗くなっていくのを感じたといいます。
――生まれてからずっと、家族しかいない一戸建てだったので、「他人と同じ屋根の下に暮らす」ことがきちんとイメージできていなかったのかもしれません。自分がこんなにもストレスを感じるとは思いませんでした
1ヵ月ほどストレスのたまる環境に耐えましたが、精神的な苦痛は体調面にも大きな影響を与えていました。菊池さん、突然の胃痛で救急搬送。医師からはストレスが原因の急性胃炎といわれました。退院後、ホームに戻ることなく、一度、荒れたままの自宅に帰ったといいます。
内閣府『令和6年版高齢社会白書』によると、「住み替え意向あり」の高齢者は30.4%。年齢を重ねるごとに、その意欲は低下していく傾向にあります。また単身者と2人以上世帯で比べると、単身者のほうが住み替え意向は高くなっています。
住み替え意向を持つようになった理由として最も多いのが、菊池さんのように「健康・体力面で不安を感じるようになったから」で24.8%。「自身の住宅が住みづらいと感じるようになったから」18.9%と合わせて、ネガティブな理由がトップ2を占めます。
高齢者の住み替えで有力な選択肢となる「老人ホーム」ですが、たった1回で「理想の住まい」が見つかるとは限りません。「相性が悪ければ次を探す」くらいの気持ちでいたほうがいいかもしれません。
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