「ひとり親」というと、母子家庭が取り上げられるケースが少なくありません。しかし、その影に隠れて経済的に厳しい状況に置かれている父子家庭も存在するようです。本記事では、Aさんの事例とともにシングルファザーの実情と利用できる支援制度について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
「思わず声を荒げてしまいました。」妻の浮気で離婚…普段は我慢強く温厚なシングルファザー、42歳で“月収ゼロ”→最終手段の生活保護申請も、福祉事務所職員からの〈まさかのひと言〉【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

全国14万9,000世帯の父子家庭

厚生労働省「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」では、母子世帯数は119万5,000世帯、父子世帯数は14万9,000世帯で、平均年間収入(母または父自身の収入)は母子世帯が272万円、父子世帯が518万円と発表しています。14万9,000世帯の父子家庭のうち、離婚が原因で父子家庭になったケースが75.6%を占めています。また、シングルファザーの就業率は85.4%と高く、仕事と子育ての両立に励んでいる父親が多いことがわかります。

 

なお、父子世帯の平均年収は518万円となっていますが、あくまでも平均です。なかには子育てしていくには厳しい収入水準の人もいらっしゃいます。そんな人のためにシングルファザーには支援制度は欠かせません。

妻の不貞で離婚…シングルファザーに

小さな会社で長年デスクワークを行ってきたAさん(42歳)は、妻の浮気が原因で離婚。現在はシングルファザーとして10歳の息子と2人暮らしをしています。しかし、勤めていた会社も経営悪化の末、とうとう倒産となってしまいます。

 

再就職先を探すも、シングルファザーという立場やAさん自身の年齢もネックになり、なかなか希望どおりの仕事は見つかりませんでした。若いころ、アルバイトの経験から調理師免許だけは持っていましたが、過去に接客で嫌な思いをしたことがあることと、いままでどおりのデスクワークを希望していたことから、新しい仕事はなかなか決まらず、途方にくれます。

 

我慢強いAさんでしたが、知人から「生活保護を受けてみたら?」といわれ、福祉事務所の窓口に相談へ行くことに。ちなみにシングルファザーの生活保護の受給状況は次のようになっています。

 

厚生労働省「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果」より引用※
[図表]父子世帯の父の生活保護の受給状況 厚生労働省「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果」より引用

 

注:1)令和3年度の調査結果は推計値であり、平成28年度の調査結果の構成割合との比較には留意が必要。なお、
比較に当たっては、政府統計の総合窓口(e-Stat)に掲載している実数値の構成割合と比較を行う必要があることに留意。
注:2)総数は不詳を除いた値である