「ひとり親」というと、母子家庭が取り上げられるケースが少なくありません。しかし、その影に隠れて経済的に厳しい状況に置かれている父子家庭も存在するようです。本記事では、Aさんの事例とともにシングルファザーの実情と利用できる支援制度について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
「思わず声を荒げてしまいました。」妻の浮気で離婚…普段は我慢強く温厚なシングルファザー、42歳で“月収ゼロ”→最終手段の生活保護申請も、福祉事務所職員からの〈まさかのひと言〉【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

子どものための保険なのに…

生活保護は経済的に困窮している人が受けられる制度です。そのため、預貯金をはじめとする資産となるものを所有している場合は、原則受給することができません。

 

預貯金などほとんどなかったAさんですが、「生命保険や学資保険には入っていますか?」と問われ、「もちろん、子どもがいますから入っていますよ」と答えると、金額などを質問されました。すると「解約すれば生活できますよね」と言われてしまい、ビックリしてしまいます。「子どものためにいろいろなものを我慢して、無理をしてまでここまで続けてきた保険なんですよ! なぜ解約しないといけないんですか!?」Aさんは思わず声を荒げてしまいました。

 

生活保護の受給を申請したときに貯蓄性のある生命保険や学資保険の加入が発覚すると、一定の条件に該当しない場合の保険は解約を求められます。解約返戻金などによって、生活の維持が可能だとみなされるからです。

 

また、生活保護の申請をすると、

 

・生活状況等を把握するための実地調査(家庭訪問等)
・預貯金、保険、不動産等の資産調査
・扶養義務者による扶養(仕送り等の援助)の可否の調査
・年金等の社会保障給付、就労収入等の調査
・就労の可能性の調査

 

といった調査が入ります。クレジットカードなども処分が求められることや、ローンの残っている住まいも処分しなければ生活保護を受けることができない、といったケースもあります。

ひとり親世帯が利用できる手当や支援制度

なお、生活保護を受給できなくても、ひとり親世帯が受給できる手当や支援制度には次のようなものがあります。制度を活用して子育ての負担を軽くしてください。

 

児童手当(ひとり親に限りません。2024年10月改正)

0~3歳未満:月額1万5,000円(第3子以降は3万円)
3歳~高校生年代:月額1万円(第3子以降は3万円)

 

児童扶養手当

高校生年代までのお子さんを養育しているひとり親家庭が対象です。所得により支給額が変わります。
 

全部支給:4万5,500円 一部支給:4万5,490円~1万740円

 

※加算額(第2子以降1人につき)令和6年11月~

全部支給:10,750円  一部支給:10,740円~5,380円

 

ひとり親家庭等医療費助成

ひとり親家庭の父または母とそのお子さんが医療機関を受診した場合、医療費の自己負担分の一部または全部を助成される制度です。各自治体により制度内容が異なります。

 

就学援助

学用品費、給食費、修学旅行費などが援助される制度です。各自治体により制度内容が異なります。

 

家賃補助

各自治体により制度内容が異なります。東京都世田谷区の場合は「ひとり親世帯向け家賃低廉化補助事業」として、家賃が最長10年間で最大4万円減額されます。

 

自立支援教育訓練給付金

就職に必要な資格や技能を身につけるために対象の教育訓練講座を受講した際、受講費用の60%(講座により上限あり)が支給される制度です。

 

ほかにも各自治体により制度内容が異なりますが、次のようなものがあります。

 

・保育料負担軽減制度
・交通費助成
・上下水道の減免制度

 

また、控除や減免については、次のようなものがあります。

 

ひとり親控除

合計所得が500万円以下といった条件などに該当する場合、35万円の所得控除が受けられます。

 

国民健康保険料・国民年金保険料の減額/免除

所得の状況などに応じて、国民健康保険料や国民年金保険料の減額や免除を受けられる場合があります。それぞれの自治体の国民健康保険担当窓口、年金事務所窓口で手続きを行います。