「103万円の壁」問題ようやく決着
令和7年度税制改正大綱では103万円の壁について、「消費者物価は平成7年から令和5年にかけて20%程度上昇している。こうした物価動向を踏まえ、所得税の基礎控除の額を現行の48万円から最高58万円に10万円、20%引き上げる」と明記した。
また給与所得控除についても「最低保障額が適用される収入である場合、収入が増えても控除額は増加しない構造であるため、物価上昇への対応とともに、就業調整にも対応するとの観点から、最低保証額を現行の55万円から65万円に10万円引き上げる」とし、基礎控除と給与所得控除を合わせて、所得税の非課税枠を103万円から123万円に引き上げることが明記された。
国民民主党は最低賃金の上昇率を基に103万円を178万円に上げるよう求めているが、大綱では「国民民主党の主張する178万円を目指して、来年から引き上げる」ことも盛り込まれた。
また、高校生年代(16~18歳)の子供がいる親の所得税負担を軽くする「扶養控除」を維持することも盛り込まれた。
そして19歳から22歳の大学生の収入が103万円を超えると親の税負担が増える「特定扶養控除」でも、「合計所得金額が85万円まで(給与収入150万円に相当)までは、親等が特定扶養控除と同額の(63万円)所得控除を受けられ、また大学生年代の子等の合計所得金額が85万円を超えた場合でも親等が受けられる控除の額が段階的に逓減する仕組みを導入する」と明記した。
iDeCoの引き上げ
税の優遇措置がある個人型の確定拠出年金(iDeCo)について、掛金の限度額を引き上げる。この合計の限度額を7,000円引き上げ、6万2,000円とする。
暗号資産課税の見直し検討を明記
暗号資産の課税では、「一定の暗号資産を広く国民の資産形成に資する金融商品として業法の中で位置づけ、(中略)その見直しを検討する」と盛り込まれた。
現行では「雑所得」として、最大55%の税率が適用され、通貨同士の交換でも課税されたり、年をまたいだ損益通算ができなかったりする。今回、課税の見直し自体が盛り込まれたわけではないが、見直しに向けて大きな一歩となった。
防衛力強化の増税
防衛力強化のため財源確保として、段階的に増税する。法人税について税額に税率4%を付加する「防衛特別法人税(仮称)」を令和8年4月に新設。たばこ税も令和8年4月に加熱式たばこの税率を引き上げて、紙たばことの税負担差を解消したうえで、たばこ全体の税率を令和9年4月まで3回にわけて1本当たり計1.5円引き上げる。
住宅ローンと生命保険
子育て世帯向けの税制優遇策として、住宅購入時の税負担を減らす「住宅ローン減税」の借入限度額の上限を1年維持する。
また生命保険料控除における新生命保険料に関係する遺族保障について、23歳未満の扶養親族がいる場合は、現行4万円の適用限度額に対して2万円の上乗せ措置を講じる。
中小企業への優遇税制
中小企業の800万円までの所得に適用される軽減税率の特例(所得のうち800万円までの分の税率を15%に低く抑える)は、リーマン・ショックの際の経済対策として講じられた時限措置だが、「賃上げや物価高への対応に直面している中小企業の状況を踏まえ、適用期限を2年延長する」としている。
だが、「極めて所得が高い中小企業等については一定の見直しを行う」とし、所得の金額が年10億円を超える事業年度について、所得の金額のうち年800万円以下の金額に適用される税率を17%(現行15%)に引き上げる。
また中小企業が一定の条件のもとで設備投資を行う場合の法人税の優遇措置は、拡充する。
資本金3,000万円以下であれば投資額の10%分、3,000万円を超える場合は投資額の7%分を税額から控除できるが、優遇措置が受けられる設備投資の対象に「建物」を追加したうえで、賃上げ率に応じて控除を上乗せする。
THE GOLD ONLINE 編集部