学校を卒業して以来、苦しいことのほうが多いであろうサラリーマン。そんな苦労のご褒美としてもらえるのが定年退職金です。一度にもらえるお金としては、おそらく人生史上最高額。何に使うかは人それぞれですが、何とも残念な使い方をする人もいるようです。
〈年金月20万円〉〈退職金3,200万円〉72歳男性、「バカみたいに散財しちゃったよ」35年連れ添った妻に三行半「東京都新宿区・家賃4万5,000円のボロアパート」に漂う絶望感 ※写真はイメージです/PIXTA

大好きな車を最優先…趣味に生きる人生の末路

頑張ってきた会社員人生。そのご褒美でもある退職金の使い道から、世のサラリーマンの多くが堅実的であることが見えてきましたが、金子さんの場合はちょっと違ったようです。

 

――昔から車が好きで。初めて車を買ってからは、3年~5年くらいで乗り換えていて……退職時点で10台くらいは乗ったかな。そこに3,000万円でしょ。それで買いたかった車を買いました

 

車の魅力を語りだすと止まらない金子さん。趣味に浸る有意義な老後を過ごしているかと思えば、そうでもないといいます。退職後も家庭を顧みず、趣味に生きる金子さんに、ついに奥さんから離婚を突きつけられたのだとか。

 

――どこか、奥さんは私のことを理解してくれていると思っていたんですが、単なる甘えだったようで……

 

元々、散財を繰り返す金子さんに愛想を尽かせていた奥さん。退職金のすべてを趣味に使ってしまったことが引き金になったといいます。結婚して35年目で離婚。自宅と700万円ほどの貯金は奥さんに譲ったものの、年金分割は請求されなかったのがせめてもの救いだったといいます。

 

離婚後、当面の生活費を稼ぐために、アルバイトをスタートさせた金子さん。退職金で購入した車を守るために、必死だったといいます。

 

そして72歳になった金子さん。東京・新宿区、築58年・家賃4万5,00円アパートでひとり暮らし。年金月20万円、手取りで17万円ほどで、今はアルバイトはしていないといいます。

 

――正直いうと……ボロアパートですね(笑)。車!? ありますよ。電車で1時間ほどのところにガレージを借りています。本当はガレージハウスを借りたかったんですが断られました。年寄りには貸せないと……。

 

ガレージは東京郊外、駅から徒歩だと40分ほどかかるところにあり、週に2、3度“会いにいく”のだとか。家賃は月5万5,000円。本当はアパート近くにガレージを借りたかったといいますが、高すぎて借りられず。それであればガレージの近くにと思いましたが、ひとり暮らしの高齢者が借りられるアパートが見つからず、今に至るといいます。

 

年金の半分以上を家賃とガレージに費やしているほか、さらに車の維持費も。わずかに残る年金でなんとかやり過ごしているといいますが、今後、病院に通わないといけなくなったら、介護が必要になったら、とても車を維持することはできず、お別れしなくてはいけないでしょう。

 

金子さん、趣味の車のために生きてきたともいえるような人生を振り返り、「バカみたいに散財してきましたね」と苦笑い。

 

――人生は楽しんだもの勝ちと思って生きてきたけど、この年になるとお金がないとダメだね。車を眺めていても不安な気持ちが消えない。趣味に生きる人生の末路がこんなものだとは……過去の自分に教えてあげたいです

 

 

[参考資料]

一般社団法人投資信託協会『60歳代以上の投資信託等に関するアンケート調査報告書』