ある日届いた「赤い封筒」
85歳の谷本さん(仮名)は月16万円の年金を受け取りながら、慎ましく暮らしていました。数年前に長年連れ添った妻が亡くなり、寂しい気持ちを抱えながらも、生活費を節約しつつ、地域の友人との交流や趣味を楽しむ老後を送っていました。
同居する54歳の息子の隆弘さん(仮名)は、長年フリーランスとして働いていましたが、収入が不安定だったこともあり、国民年金保険料を未納にしていました。自宅には、隆弘さん宛てに日本年金機構から催告状のハガキや封書が何通か届いていました。しかし、自分の老後まで年金制度が成り立っているかわからない、もらえるかわからないものにお金を支払う必要があるのかと、不信感を抱いていたこともあり、長年滞納。今回届いた「赤い封筒」には、最終的な「差押予告通知書」と記載されていました。しかし、中身をしっかりと確認することもなく、なにも対応せずに放っておいていたのです。
年金未納…差し押さえの現場
差し押さえの手続きは、突然行われました。自宅に担当者がやってきて、いろいろ調べていきます。隆弘さんは貯金もほとんどなく、自分自身の財産もありませんでした。そのため、世帯主である父の谷本さんの銀行口座が差し押さえられる結果に。隆弘さんはまさか親の資産にまで影響するとは思いもよらず、狼狽えます。この件は、谷本さんの老後の生活に大きな影響を与えました。
「ごめん父さん。俺のせいだ……」隆弘さんは父に懺悔しました。
「緑→青→黄→ピンク→赤」の順で警告
「赤い封筒」とは、日本年金機構が未納者に対し最終的に送る督促状です。これには未納期間や未納額・支払い期限・納付方法などが記載されています。しかし、「赤い封筒」が突然届くのではなく、未納者には段階的に電話での連絡やハガキや封書などで、通知が届きます。谷本さん親子の場合、隆弘さんの電話は個人のスマートフォンを使用。郵便物は息子の仕事関係のものかもしれないと、日常的に触らないようにしていたことから、谷本さん自身は息子の滞納を知らなかったようです。
また、未納回数が少ないときには、緑色の圧着ハガキで未納である通知が届きます。その後、青色の封書で催告状、黄色の封書、ピンク色の特別催告状からさらに段階的に赤色が濃くなり、最終的に「差押予告通知書」が届くことになります。