一度入所したらいつまでもいられる。そんなイメージを持っているかもしれない老人ホーム。しかし、老人ホームごとに退去要件があり、それにふれてしまうとホームのほうから「出て行ってもらえますか?」といわれます。そんな退去要件に自分は当てはまるはずがないと思っていたら……そんな想定外に直面するケースもあるようです。
お金出してくれるよね?年金月15万円・82歳の母「老人ホーム費用」は子の負担と余裕をかますも、まさか退去の大誤算「何かの間違いでは?」 (※写真はイメージです/PIXTA)

月額費用3万円の値上げ。増額分の支払いも子をあてにしたが…

安心・安全の老人ホームでの生活。しかしそんな生活に終わりが訪れます。その要因となったのが、昨今のインフレ。あらゆるものが値上がりしていますが、老人ホーム費用も例外ではありません。

 

民間有料老人ホームが値上げする場合、入居者や家族に向けて運営懇談会を開いて説明。都道府県などへの報告が義務づけられています。小林さんの老人ホームでも説明会が行われ、月額費用が3万円の値上げが発表されました。毎月の月額費用は15万円を小林さん自身が払い、足の出る10万円ほどを子どもたちが払っています。今回の値上げ分は、子どもたちに負担をお願いするしかない。1人1万円ほどだから、大丈夫か。

 

――お金、出してくれるよね?

 

長男にお願いしておいたから大丈夫。そう思っていましたが、ある日、施設側から月額費用が滞納となっていることを知らされます。寝耳に水の話。すぐに長男に連絡をし、老人ホーム費用が滞納になっていることを伝えます。「どういうこと?」と、長男から「もう、無理だ、払えない」とポツリ。実は、足が出ていた10万円は毎月、長男ひとりで払っていたことが発覚。その理由を聞くと「弟や妹に頼むことなんてできない」という返答。

 

思ってもみなかった展開に、小林さんも焦りが募ります。これ以上長男にいったところで意味がないと、次男や長女に援助を求めますが、答えはNO。「お母さん、このご時世、1万円だってキツイよ」と一蹴されたといいます。結局、入居を続けることは無理があると判断し、退去を決断した顛末。

 

老人ホーム費用は、契約時の費用がずっと続くと思いがちですが、物価高や人件費の上昇は、入居中でも料金に反映されます。公益社団法人全国有料老人ホーム協会が介護事業所での物価高の影響について調査したところによると、この5年間で電気代は155%、ガス代は151%、燃料費は132%、給食用材料費・委託費は156%上昇したといいます。これらを価格転嫁させないと経営は成り立たず、月額費用の値上げもやむをえないという状況です。今後もこの物価高が続けば、老人ホーム費用のさらなる値上げも必至。それにより退去を迫られる高齢者も増えていくと考えられます。

 

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[参考資料]

株式会社Speee/ケアスル 介護『介護施設の費用に関するアンケート』

公益社団法人全国有料老人ホーム協会『令和6年夏:物価高騰・賃上げ状況調査報告』