
人手不足感が強い介護業界…突然の「サービスの質の低下」を見抜くには
美智子さん、明美さんのような事態を防ぐためにも、老人ホーム選びには慎重さが求められます。老人ホームを検討する段階で、ロケーションや費用感のほか、どのようなことに注意すべきなのでしょうか。一例をみていきます。
▼スタッフの質と人数
施設見学時には、スタッフの対応や入居者とのコミュニケーションを観察します。十分な数のスタッフが配置されているか、また彼らが入居者に対して丁寧に接しているかを確認することが重要です。
▼医療サポート体制
施設内に医療スタッフが常駐しているか、また近隣の医療機関との連携体制が整っているかを確認します。特に、緊急時の対応策が明確に定められているかどうかは重要なポイントです。
▼生活環境と設備
バリアフリー設計や清潔感、安全対策(手すりや緊急呼び出しボタンなど)が整っているか確認します。特に、ナースコールや緊急通報装置の設置状況と使用方法を確認することが大切です。
▼ケアプランと介護サービス
施設が提供する介護サービスが個別のニーズに合ったものであるか確認します。特に、認知症ケアの対応力や夜間の見守り体制について詳しく聞くことが重要です。
▼入居者との交流機会
孤独感を軽減するためには、入居者同士や家族との交流機会が重要です。施設内でのイベントや活動プログラムについて確認します。
ただどんなに慎重に見学を重ねても、深刻な人で不足といわれている介護施設では、離職によりスタッフ不足→サービスの質の低下ということは、どこの施設でも起こりうることです。
厚生労働省『令和6年版 労働経済の分析』によると、介護業界の人手不足の状況を以下のように分析しています。
・総じて、人手不足が強い傾向にあり、法人規模別にみると、100人以上の大きい事業所において人手不足感が強い
・地域別にみると、「政令指定都市、東京23区」のほうが「それ以外」の地域と比べて介護事業所における人手不足感は強い
・人手不足となっている事業所の割合が高まるなか、事業運営上の問題点として、「人手不足」をあげる事業所の割合も高まっている。また、「今の介護報酬では、十分な賃金を払えない」「サービス提供に関する書類作成が煩雑で、時間に追われている」「教育・研修の時間が十分に取れない」等、人手不足に関連する問題点をあげる事業所が多い
業界の人手不足から来る弊害に対して、個人で対処するのは至難の業。家族ができる唯一の対策は、老人ホームに入所して終わりとは思わず、老人ホームに入所した家族とは頻繁にコミュニケーションを図ることです。
[参考資料]