司法書士が教える「会社設立」の手順 「登記申請~登記完了後」に求められる“対応”とは?【司法書士が解説】

司法書士が教える「会社設立」の手順 「登記申請~登記完了後」に求められる“対応”とは?【司法書士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載では、ここまで会社設立のための準備を徹底解説してきました。本稿では、最終プロセスである「登記申請」について見ていきましょう。この手続きには正確さと準備が求められ、不備があれば申請が受理されず、設立スケジュール全体に影響を及ぼします。加陽麻里布氏(司法書士法人永田町事務所 代表)が、登記申請の具体的な流れや準備すべき書類、成功させるためのコツ、注意点までを詳しく解説します。

会社設立の最終プロセス、登記申請

登記申請は、会社を「法人」として成立させるための公式な手続きです。登記を申請し、これが完了することで会社は法律的な存在として認められ、正式な事業活動を行うことが可能になります。

 

【登記申請に必要な書類一覧】

登記申請には、次の書類を提出する必要があります。これらの書類に不備があれば、法務局での審査が通らないため、作成時に慎重な確認が必要です。

 

1. 登記申請書

会社の基本情報を記載する最重要書類です。記載内容には、会社名、本店所在地、資本金、役員情報などが含まれます。

 

2. 認証済み定款

公証役場で認証を受けた定款の原本(またはPDFデータ)です。電子定款を利用する場合は収入印紙代が不要ですので、コストを削減できます。

 

3. 払込証明書

発起人が出資金を適切に払い込んだことを証明する書類です。振込履歴を記載した通帳のコピーを添付します。

 

4. 役員の就任承諾書

取締役や監査役などがその役職を承諾したことを示す書類です。各役員の署名と押印が必要となります。

 

5. 役員の印鑑証明書

各役員の印鑑証明書(発行から3ヵ月以内のもの)を添付します。

 

6. 印鑑届出書・印鑑カード交付申請書

法人実印を法務局に登録するための書類です。登記完了後に法人印鑑証明書を取得する際に必要となる、印鑑カードの交付申請書も作成します。

 

7. 発起人決定書(必要な場合のみ)

定款で本店所在地を最小行政区画までとした場合、具体的な本店所在場所を決定したことを証する発起人決定書を添付します(※定款の附則に本店所在場所を定める場合は、この書類の作成・提出は不要です)。

登記申請の具体的な手順

ステップ1:書類の準備

必要な書類をすべて揃え、記載内容に誤りや不備がないか念入りに確認します。

 

ステップ2:管轄法務局への提出

本店所在地を管轄する法務局に書類を提出します。

 

〈提出方法〉

・窓口提出:直接法務局に持参する。

・郵送提出:書類を郵送で送付する。

・オンライン申請:電子申請で効率化。

 

ステップ3:登録免許税の支払い

資本金に応じて登録免許税を支払います。

 

・最低金額:15万円(資本金が約2,157万円以下の場合)

・計算式:資本金の額×0.7%(ただし最低15万円)

 

支払い方法には、収入印紙または電子納付(オンライン申請の場合のみ)が利用可能です。

 

ステップ4:法務局での審査

提出書類が法務局で審査され、不備がなければ数日から1週間程度で登記が完了します。不備が見つかった場合、法務局から連絡があり、修正が求められます。

 

ステップ5:登記完了

登記が完了すると、登記簿謄本や法人印鑑証明書を取得することが可能となります。

登記申請の注意点

1.書類の整合性

定款、登記申請書、払込証明書などの記載内容が完全に一致していることを確認します。特に会社名や本店所在地の誤記にご注意ください。

 

2.法人実印の準備

法人実印は会社の公式な契約や手続きに使用される重要な印鑑です。事前に作成しておきましょう。

 

3.印鑑証明書の取得

印鑑証明書(3ヵ月以内)の添付が必要となります。有効期限を確認しましょう。

登記申請後の対応

1.法人登記簿謄本の取得

法務局で取得可能です。金融機関での口座開設や取引先との契約で使用します。

 

2.法人印鑑証明書の取得

登記完了後に取得できます。契約書や公式な取引で必須です。

 

3.法人名義の銀行口座開設

登記簿謄本や法人印鑑証明書を持参し、銀行で手続きします。

 

4.各種届出

税務署等へ開業届出を提出します。

 

5.許認可の申請

業種によって必要な許認可の手続きを開始します。

登記申請を確実に成功させるために

登記申請は会社設立の最終ステップであり、法人としての第一歩です。次のポイントを押さえて、確実な手続きを目指しましょう。

 

〈成功のためのポイント〉

1.必要書類を正確に準備し、内容を確認。

2.登録免許税を期限内に納付。

3.書類の整合性を確保・申請先の管轄法務局を事前に確認。

 

登記申請には多くの書類が必要で、法的な要件も厳密です。手続きに不慣れな場合は、司法書士に依頼することで次のようなメリットが得られます。

 

・書類作成や申請手続きを任せられる。

・登記申請を迅速化できる。

・不備によるリスクを回避できる。

 

登記申請をスムーズに進めることで、会社運営のスタートを力強く切ることができます。専門家のサポートを活用すれば、さらなる安心感と効率を得られるでしょう。

 

 

加陽 麻里布

司法書士法人永田町事務所 代表司法書士

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