会社運営の中核を担う存在、「役員」
役員は、会社の経営や業務執行を行う重要なポジションを指します。役員には、取締役と監査役が含まれ、それぞれに役割が明確に定められています。
〈役員の種類と役割〉
1.取締役:会社の業務を執行する
2.監査役:取締役の業務執行や会計処理を監査する
これらの役員が適切に機能することで、効率的で透明性の高い経営が可能になります。
自分以外の役員を選任する際のポイント
1. 会社の規模や事業内容に応じた役員構成
・小規模企業やスタートアップ
シンプルな構成が理想的です。取締役1名が業務執行から意思決定まで一貫して行う形態が一般的です。
・中規模以上の企業
取締役会や監査役を設置し、業務執行と監督を分離する構成が適しています。特に外部株主がいる場合は透明性が求められます。
2. 適材適所の選任
役員は会社の運営を左右するため、次の基準を満たす人材を選ぶことが重要です。
・信頼性
経営者や取引先、従業員から信頼されることが最優先です。
・経営スキルと専門性
会社の事業内容に精通し、経営戦略を立案できる能力が求められます。
・経営理念への共感
会社のビジョンに共感し、一緒に目標を達成する意欲を持つ人物を選びましょう。
3. 法的要件の確認
役員には法律で定められた資格要件があります。具体的には以下が含まれます。
・成年者であること
・破産者や一定の犯罪歴を持つ者ではないこと
なお、取締役会を設置する場合は、最低3名の取締役と1名の監査役が必要です。
役員の任期と設定方法
【取締役の任期】
通常、取締役の任期は「2年以内に終了する事業年度の最終の定時株主総会終結時まで」とされています。ただし、非公開会社(株式譲渡制限会社)では、定款により最長10年まで任期を延長できます。
【監査役の任期】
監査役の任期は「4年以内に終了する事業年度の最終の定時株主総会終結時まで」です。こちらも非公開会社では10年まで延長可能です。
【任期を決定する際のポイント】
●コスト効率
任期を2年とした場合、2年後に続投する場合でも「重任」登記を申請する義務があります。任期を長くすることで、変更登記の頻度を減らし、手間と費用を抑えることが可能です。
●柔軟性の確保
一方で任期が長すぎると、経営陣を見直す機会が減るため、慎重に設定することが求められます。
定款で定めるべき役員に関する事項
定款には、役員に関する基本事項を記載することで、会社運営の透明性を確保できます。具体的には、次の内容を盛り込むことが一般的です。
【定款記載の例】
1.役員の人数
「当会社の取締役は1名以上とする。」
2.任期
「当会社の取締役の任期は10年とする。」
3.選任方法
「取締役は株主総会で選任する。」
4.代表取締役の選定方法(取締役会設置会社の場合)
「代表取締役は取締役会の決議によって選定する。」
これらの規定は、のちの運営における混乱を防ぎ、適切な経営体制を構築する基盤となります。
よくある質問
Q1:家族を取締役に選任しても問題ない?
⇒A.問題ありません。ただし、能力や適性をしっかり見極め、経営に実際に貢献できるかを判断してください。
Q2:任期を短くするデメリットとは?
⇒A.短い期間で登記手続きが発生するため、コストや手間がかかります。任期のバランスを考慮しましょう。
Q3:監査役の設置は必須?
⇒A.非公開会社で取締役会を設置しない場合、監査役は必須ではありません。ただし、外部からの信頼性向上を目的に設置を検討するのも一案です。
役員の選定は経営基盤を確立する第一歩
役員の選任は経営に関わる重要事項です。適切な人材を役員に選任することで、会社を成功へと導く力を得ることができます。これらを踏まえて、会社設立の最重要プロセスをしっかりと進めましょう。
加陽 麻里布
司法書士法人永田町事務所 代表司法書士