写真はイメージです/PIXTA
長男「2人きりで話がしたい」…そこで聞いた衝撃的な内容
70歳を迎えた稔さんですが、今でも週3日程度、仕事をしています。月収は18万円ほどになるとか。現役感があふれているからでしょうか、よく50代に間違えられるほど若々しいのが密かな自慢なんだとか。長男家族からも「本当、いつまでも元気ですよねぇ」と褒められて(⁉)ご満悦だったといいます。
ドタバタ劇の始まりは、帰る直前、長男が2人きりで話がしたいといってきたときのこと。真剣なまなざしに稔さんも緊張が走ったといいます。2人きりになったものの、何か言い難そうな様子。しばらくすると、長男は土下座をして「父さん、お金を貸してくれないか」と頼んできたといいます。突然の展開に唖然とする稔さん。
――おお、金か、な、何円だ?
理由を聞く前に、なぜか金額を聞いた稔さん。そこで指を1本立てる長男。「100万円?」と思っていたら
――いや……1,000万円
あまりの金額に腰が抜けそうになったという稔さん。詳しく話を聞くと、住宅購入の資金を援助してくれないか、という頼み事でした。「変な借金を作ってしまったのかと焦りました」と稔さん。昨今の物価高により住宅価格も高騰。コツコツとお金を貯めてきたものの、現在の頭金だけでは到底足りず。不動産会社からは「フルローンでも余裕ですよ」と軽いことをいわれましたが、それは抵抗がある。ずるずると悩んでいると、お目当ての不動産は買えず、どうしたものかと悩んでいたというのです。
この場では「とりあえず考えて、すぐに連絡する」と長男に伝え、可愛い孫ともお別れ。そして「1,000万円をどうするか問題」に取り組みます。
老後資金として用意している預貯金で援助することもできますが、そうなると自身の後ろ盾がなくなり、不安感が増します。また稔さんには長男のほか、次男もいます。長男だけ、というわけにはいかないでしょう。預貯金とは別に1,000万円を用意できないものか……。悩みに悩んだ末、思いついた妙案が。稔さん、年金事務所に走り、預貯金とは別に1,000万円を用意することができました。
それは、まだ受け取っていなかった年金。稔さんはまだ給与がもらえるからと年金を繰下げ。65歳での受取額の1.42倍の年金を請求するところでした。ただ実際の年金の請求時に繰下げ申出をせず、65歳到達時点の本来の年金をさかのぼって一括請求することも可能です。
稔さんの場合、65歳時点で基礎年金と厚生年金合わせて、月17万円の年金を受け取れるはずでした。その1.42倍の月24万円ほどの年金を受け取るはずでしたが、一方で繰下げではなく未支給分の年金を一括請求すれば、1,000万円強が手に入ることになります。
熟考を重ねた結果、1.42倍に増額した年金ではなく、長男への援助を優先した稔さん。「月17万円の年金でも十分、贅沢な生活ができますよ」と笑顔です。
ちなみに令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間に親から住宅資金として贈与を受けた場合、省エネ等住宅の場合には1,000万円まで、それ以外の住宅の場合には500万円まで非課税。稔さんの長男の場合も、非課税で済んだようです。
[参考資料]