
世界を変えたイノベーション「iPhone」
世界を変えたイノベーションとして思いつくのは、やはりiPhoneでしょう。アップルが初めてiPhoneを発売したのは、2007年です。iPhoneは、カリスマ的経営者だったスティーブ・ジョブズのアイデアにより、それまで世界にあった携帯端末の「当たり前」を一変させました。キーボードをなくして端末のほぼ全面をカラー表示が可能なディスプレイにし、表面のボタンはたった一つ。それなのに、メールも送れるし、ウェブサイトを見ることもできて音楽だって聴ける。iPhoneは世界に衝撃を与えました。
デザインの美しさも、iPhoneの特徴です。余計なものを省いてシンプルにし、角を丸くした美しいデザイン。その洗練されたデザイン性により、いつしか「iPhoneユーザー=センスのいい人」というイメージができ上がっていきました。
翌年にはグーグルのAndroidも誕生し、スマートフォンは瞬く間に世界中の人々の手に渡りました。今ではスマートフォンは世界各地で「ライフライン」と呼ぶべき存在になっています。また、グーグルは、設立当初は精度の高い検索エンジンを提供する会社でしたが、その後、さまざまな企業とのM&Aやパートナーシップを築くことで、今ではGメール、グーグルマップ、グーグル・クロームなど、世界中の人に活用されるサービスを展開していきました。さらにAndroidやスマートスピーカーのグーグル・ホームなども私たちの生活に浸透しています。毎日、世界中の人がグーグルが提供するサービスを使っており、今ではグーグルのない世界など考えられないくらいです。
「ガラケー」を生んだ日本のイノベーション
戦後から高度経済成長期の日本も、自動車やラジオなど海外の製品を手本に、それらに負けない製品をつくるイノベーションを起こしてきました。価格が安く、大量生産ができ、品質がいい「メイド・イン・ジャパン」の製品は世界を驚かせました。半導体産業でもアメリカとの競争に勝ち、80年代後半には世界の50%以上のシェアを獲得しました。
けれど、90年代以降、日本はイノベーションの方向を見誤ってしまったのです。日本のイノベーションの誤算を象徴するのが、「ガラケー(ガラパゴスケータイ)」です。着メロ、着うた、ワンセグ、おサイフ携帯に赤外線通信など、30代以上の方は「あった、あった!」と、懐かしく感じるかもしれません。
日本の携帯電話産業は、国内のユーザーを満足させるため、つぎからつぎへと携帯電話に独自の新機能を追加していきました。けれど、それらの機能は、海外から見れば過剰で魅力的に感じられず、ガラケーは海外市場に進出できなくなってしまったのです。そうしていつしか日本の携帯電話は、独自の進化を遂げたガラパゴス諸島の生物にたとえて「ガラパゴスケータイ」と呼ばれるようになりました。
中内 玲子
日英バイリンガル幼稚園Sora International Preschool
創立者