
子どもの考えるチャンスを奪ってしまう親
親が手をかけすぎると、子どもの能力を伸ばせない
ロシアの心理学者レフ・ヴィゴツキーが提唱した「発達の最近接領域」という考え方があります。これは、子どもには「自分でできること」「人の助けを借りればできること」「できないこと」があり、「自分でできること」と「人の助けを借りればできること」の差が「子どもの成長における伸びしろ」であるという理論です。
たとえば、バナナの皮をむいてもらえれば自分で食べられる場合、親が少し皮をむいてあげれば子どもは一人でバナナを食べることができます。このとき、バナナの皮をすべてむいてから切って出してあげるのは自分でできることまで親がやる過保護であり、皮をむかないまま、まるごとバナナを渡すのは、自力でできないことをサポートせずに放置していることになります。
親が手をかけすぎると、子どもが自分で考えて行動する機会を奪うことになってしまいます。つい手をかけてしまう方は、意識して手を抜くくらいでちょうどいいのかもしれません。
たとえば、洋服は親が用意してあげるのではなく、子どもに選ばせましょう。うちの子どもたちは3人とも自分でその日に着る洋服を選んでいます。子どもの性格やその日の調子によって選べないこともあるかもしれませんが、それでもかまいません。「選ぶ」ことは考えるための一つの訓練になります。
子どもが集中しているときは声をかけない
親と一緒に遊べるのは、安心感を感じながら楽しく遊ぶことができ、子どもにとってとても嬉しいことです。でも、いつも親がつきっきりで遊ぶのはあまりよいことではありません。子どもが一人で集中しているときはそっとしておきましょう。
黙々と絵を描いていたり、積み木を重ねていたり、絵本を見ながらひとり言を言っていたり。そういうとき、子どもたちは目の前のものごとに集中し、自分だけの世界で自由に想像を羽ばたかせています。モンテッソーリ教育では、「ものごとに没頭する時間」が子どもの成長に欠かせないと考え、集中できる体験を重視しています。
また、上皇后・美智子さまの子育てについてのお考えをまとめた『ナルちゃん憲法』(光文社)にも、ものごとに夢中になれる環境をつくることが大切であると記されています。
まじめな親ほど、子どもに気づきやアイデアを与えようと「パンダがいるね。昨日、テレビで見たね」「ピンクだけじゃなく、オレンジも使ってみたら?」など声をかけてしまいますが、むやみに声をかけて子どもの集中力を途切れさせるのはやめましょう。
子どもが親のほうを見たり、何かを見せにきたときが声がけのベストなタイミングです。「これは何?」「わあ! こんなに高く積めたの?」など、声をかけてあげましょう。
中内 玲子
日英バイリンガル幼稚園Sora International Preschool
創立者