“うまい話”ばかりではない…海外出稼ぎの「落とし穴」
海外出稼ぎ労働者を終え、帰国後における為替相場の“まさか”を考えていない人は意外と多いようです。
実際、私の姉はワーホリを利用してカナダに行った経験があるのですが、当時みるみると円高に振れていき、帰国時にはカナダドルが大幅に下落したと聞きました。1990年当時のカナダドルは124円でしたが、1992年の帰国時には104円にまで円高に振れ、両替をちゅうちょしていたことを鮮明に覚えています。
すぐに日本円が必要だった姉は、仕方なく日本円に両替したのですが、思っていた以上の損失を感じたと嘆いていたのが印象的でした。今後のマネープランに悪影響があったことはいうまでもありません。
万が一帰国時に円高となって大きく為替差損が出てしまった場合には、円安になるのを待ってから保有外貨を両替するなどの工夫が求められます。
また納税面や社会保険制度における諸手続きの負担についても、しっかりと検討しておく必要があります。
とくに帰国後に待ち受ける納税事務については、二重課税の還付手続きとなる外国税額控除の申請手続きなどは、複雑かつ煩雑なものになるため、苦手にしている人が多い印象です。
確定申告を経験したことのない人にとっては、手続きの煩雑さからつまずいてしまうケースも多く見受けられます。負担軽減策として税理士に依頼し、予想外の報酬がかかってしまったというケースも珍しくはありません。このような思わぬコストも計上せざるを得なくなる点も想定しておく必要があるでしょう。
高額所得を目指して海外出稼ぎ労働者に赴いたとしても、そこからくる税負担や、煩雑を極める申告納税事務は決して避けることができません。
住民票を抜いて出国したか、納税管理人を設定したかなどで、人それぞれ課税関係は大きく変わります。帰国後、まずはお近くの税務署に確認してみることをおすすめします。
これからのワーホリ利用は要注意
昨今の円安の影響を受け、ワーホリ利用などによる海外短期就労者が高所得を得てきました。しかしこの円安基調はいつまで続くかわかりません。円安がかなり進行したことから、今後は円高に戻る可能性すらあるのです。
そのため、海外就労を控えている人たちは、いま一度冷静になって、すでに渡航しているワーホリ就労者とは事情が異なってくることを理解しておきましょう。
また、為替以外のリスクとしては、帰国後の納税を含めた手続き負担もあげられます。海外就労者かつ高所得者であるがゆえの、その裏に潜むリスクと向き合わなくてはなりません。いわば義務ともいえる事務的負担は、決して避けて通れるものではないことを自覚しておく必要があるのです。
茂野 博起
FP Office株式会社
ファイナンシャルプランナー