元警察官でも小心者の父…再検査の結果を聞きに行けず
誰にでも等しく訪れる、人生の最期。ただ、そのときどうしたいか、家族としっかり話し合うことができている人はまれかもしれません。
田中大輝(仮名・37歳)さんの父・博文さん(仮名・77歳)の場合も同様。母(博文さんの妻)・良子さん(仮名)は20年前に乳がんで亡くなっています。だからこそ、自分にも、もしものことがあったら……そんな展開になるのでしょうが、博文さんはむしろ、万一の際の話はできるだけ遠ざけようとしていました。
――元・警察官だったのに、蚤の心臓だから
そう話すのは、大輝さんの妹の絵美子さん(仮名・35歳)。他人に対しては強いことを言える父・博文さんですが、自分のこととなると、ビックリするくらいビビりで、実は注射が大の苦手。毎年のインフルエンザの予防接種も、健康診断のときの採血も、まるでこの世の終わりのような表情をしながら受けていることを絵美子さんは知っています。
そんな博文さんに問題が生じたのが、先日の健康診断。再検査の結果、進行性のがんが見つかり、すでに手術は難しいこと、放射線治療と抗がん剤で進行を遅らせる以外は何もできないことがわかったのです。その説明を受けたのは、大輝さんと絵美子さんの2人。
――なんで、私たちが先に聞いているの?
――お父さんから「まずはお前たちで聞いてくれ」と頼まれて
――相変わらずビビりだね
どう父に伝えればいいか……悩んでいると、絵美子さんが「まずはお父さんのところに行こうよ」とスタスタと行ってしまいました。こんなときは嫌な予感しかしません。実家につくなり絵美子さんはひと言。
――お父さん、ダメだったよ!
「ちょ、ちょ、伝え方があるだろう」と制止するもすでに手遅れ。「やっぱりか」と肩を落とす博文さんに、絵美子さんは畳みかけます。
――77歳なんだし、もう十分でしょ。お母さんなんて、60年も生きられなかったんだし
さらに絵美子さんは追い打ちをかけます。
――そうそう、遺言書を作ってよ。あっちの家族とは揉めたくない
実は博文さんは再婚していて、先妻との間にも2人の子どもがいました。普段は特に交流はなく、相続となったとき、ほぼ初対面で遺産分割の話をしなければなりません。そのときに遺言書のある/なしで、ずいぶんと状況が変わるでしょう。
それにしても、病気の話をするばかりか、遺言書の話までして父親をとことん意気消沈とするとは……長女の暴走ぶりに驚きつつも、そこに助けられた部分も。ただ、この先のことを思うと不安しかなかったといいます。
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