一般媒介契約のメリット
一般媒介契約は、自由度が高く、比較的上級者向けの契約形態ではありますが、売主にとって多くのメリットをもたらす形態でもあります。一般媒介契約の主なメリットについて詳しく紹介します。
- 複数の不動産会社に依頼できる
- 売り手の自由度が高い
- 物件の囲い込みを防げる
- 物件を公開せずに売却できる
- 成約手数料の競争が期待できる
複数の不動産会社に依頼できる
一般媒介契約の最大の特徴は、複数の不動産会社と同時に契約を結べることです。
これにより、各不動産会社がもつ独自の顧客ネットワークや販売チャネルを最大限に活用することができます。複数の不動産会社と契約すれば、異なる地域やターゲット層にアプローチできるようになるため、売却の可能性が高まります。
ただし、他の不動産会社との契約状況を明らかにしなければならない明示型一般媒介契約の場合には、不動産会社の販売意欲が低下し、なかなか積極的な売却活動を行ってもらえない可能性もあります。
売り手の自由度が高い
一般媒介契約は比較的自由度の高い形態であり、自身で直接買主を見つけて取引することも可能です。不動産会社に頼らず自分で取引を完了させられる柔軟性が大きなメリットといえるでしょう。
また、不動産会社にはレインズへの登録義務が課されていないため、レインズに登録するか不動産会社と相談して決めることができます。
さらに、一般媒介契約は、法令上、契約期間の上限が定められていないため、不動産会社との合意によって契約期間を自由に決めることもできます。
ただし、一般媒介契約の契約も有効期間を3ヵ月以内とするよう行政が推奨しています。
物件の囲い込みを防げる
一般媒介契約の大きなメリットのひとつに、物件の「囲い込み」を防げるという点があります。
囲い込みとは、不動産会社が物件情報を他社に公開せず、自社で独占的に取引しようとする行為を指します。囲い込みは特に専任媒介契約や専属専任媒介契約で発生しやすい特徴があります。
囲い込みを行うことで、不動産会社にとっては利益を最大化することが可能ですが、売主にとって不利になります。自社での取引成立に固執する結果、他の会社が持つ広い顧客ネットワークを活用できないため、売却する機会が制限される可能性や、売却価格が適正価格に届かない可能性があります。
一方で、一般媒介契約では複数の不動産会社に売却を依頼できるため、一社が物件を囲い込むことが困難になります。
物件が広範に市場に出回ることによって、売却機会の増加や適正価格での売却が期待でき、売主にとって有利な状況を生み出すことができます。
物件を公開せずに売却できる
一般媒介契約には指定流通機構(レインズ)への登録義務がないため、登録するかは任意で決められます。登録しないことによって物件を公開せずに売却することが可能です。
例えば、特定の人にのみ物件を紹介したい場合や、物件の情報を非公開にすることで売却の範囲を制限しつつ売却活動を進めることができます。
さらに、市場の状況や物件の特性によっては、非公開での売却が効果的となる場合もあります。例えば、非常に高額な物件や希少な物件の場合、公開せずに限られた顧客層にだけ売却情報を提供することで、値下げ交渉を避けたり、条件の良い買い手を見つけたりすることが可能です。
このように一般媒介契約は、物件の売却を進めたいものの、情報の公開を最小限に抑えたいと考える売主にとって、適した選択肢となるでしょう。しかし、物件の公開を抑えることにより売却の機会を失ってしまうこともあるため注意が必要です。
成約手数料の競争が期待できる
売却予定の物件に需要がある場合、一般媒介契約を選択することによって不動産会社間での成約手数料の競争が期待できます。
複数の不動産会社が売却活動に関わることで、各社が迅速かつ積極的に取引を成立させようとするため、成約手数料に関する条件も売主に有利になる可能性があります。また、競争が発生することで、売却価格の引き上げや仲介手数料の値下げといった交渉余地も広がります。
これらは、単一の不動産会社と契約する場合には得られにくいメリットであり、一般媒介契約の大きな魅力です。しかし、他の不動産会社や売主自身による成約に至った場合など、自社で成約手数料を得られない可能性があることから、不動産会社の積極的な活動が失われることもあります。詳しくは後述します。