物価高でも仕送りや奨学金は増えず、103万円の壁も立ちはだかり…八方塞がりの若者たち
地方から上京し、都内の国立大学に通う佐々木大輝さん。地元でも知られた企業で働くサラリーマンの父親(48歳)からは、上京・進学にあたり「仕送りは月7万まで。足りない分は奨学金とアルバイトで賄うこと」といわれたとか。
――うちは平均的な家庭だから、東京の私大なんて無理といっていました。結局、学費も払ってくれてありがたいです
佐々木さんの出身地における大企業勤務・40代後半のサラリーマンの平均給与は、手当込みの月収で45.5万円、手取りは34万円ほど。賞与も含めた年収で687.9万円。そこから月7万円の仕送り、初年度150万円近い学費を工面……佐々木さんのお父さん、かなり頑張っています。
そんな父親に感謝してもし切れないという佐々木さんですが、「アルバイトを103万円以内に収めるというのがかなりしんどい」といいます。
――仕送りは家賃で消えて、残りは自分もち。できるだけアルバイト代でやりくりをしたいと考えています
月5万円ほどの奨学金を手にしている佐々木さんですが、ほぼ手を付けていないといいます。なぜ?
――奨学金の返済が大変って聞きますよね。だから万一、何か起きたときのために受け取るけど、できるだけ使わず貯金に回して、卒業したと同時に一気に返済したいと考えています
労働者福祉中央協議会『高等教育費や奨学金負担に関するアンケート2024』によると、奨学金返済に7割が不安を感じ、返済の負担感に4割台半ばが苦しさを実感しています。また奨学金返済は生活設計にも大きな影響を及ぼし、「貯蓄」は6割強、「日常的な食事」や「結婚」は4割強、「出産」「子育て」は4割前後が「影響あり」と回答しています。このような状況下、佐々木さんのように「奨学金は利用するが、できるだけ使わないよう生活をする」という人がいてもおかしくないでしょう。
アルバイトは時給1,430円の飲食店。「まかないがあり食費が浮くから」というのが選んだ理由だといいます。いろいろと節約を心がけているものの、生活はかなり困窮。
――何を買うにしても高くて。物価は高くなっているのに、103万円はそのまま……おかしくないですか?
総務省が発表した10月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が108.8となり、前年同月比2.3%の上昇。生鮮食品を除く食料は3.8%の上昇、価格高騰が続く米類は58.9%の上昇で、比較可能な1971年1月以降、過去最大の伸び率となりました。
――物価が上がっても、仕送りや奨学金が増えるわけではないし、アルバイトは103万円までといわれるし……このままでは生きていけません
稼ぎたくても稼ぐことのできない学生たち。103万円の壁については撤廃が叫ばれているものの、地方税収が1割減になると予測されるなど、議論は遅々と進んでいかない印象。そういっているうちに、生活困窮に陥る学生は増加の一途を辿っていきそうです。
[参考資料]