認知症であることを認めたくない…ひとり戦っていた元教員の父
診断の結果、美恵子さんの父は認知症であるとされました。壁一面に貼ってあった付箋は、物忘れしないようにという努力の結果。認知症かもしれないという恐れから、人との接触を避けていたといいます。
――ひとり、不安だったでしょうね、父は
家族で認知症と診断されたのは初めてだという美恵子さん。自身もどのように父と接していけばいいのか戸惑いを感じながら、今は試行錯誤中だといいます。
ライフネット生命保険株式会社が行った『認知症に関するアンケート調査』によると、「あなたのご家族や親族など身近な人で、これまでに認知症と診断された方はいますか」の問いに対して「ある」は24.3%。60代でも30%台であることを鑑みると、高齢化により認知症患者は増えていますが、家族の誰かが認知症になる、というのはまだまだ少数派。そのため、美恵子さんのように「どのように接したらいいのか」という戸惑いが生まれるのかもしれません。
また「あなたご自身の認知症に対する考え方で当てはまるものは?」の問いで、「自分は将来認知症になると思う」と回答したのは全体で16.4%。家族に認知症患者がいるケースでも24.7%に留まりました。認知症になるのは避けたいこと……多くの人がそう思っていることの裏返しのようです。
厚生労働省は認知症の人と接するときの心構えとして、「認知症の本人には自覚がないは大きな間違い」としています。そして「健康な人の心情がさまざまであると同じように認知症の人の心情もさまざま」であり、「「認知症の人がいるのではなく、私の友達のAさんが認知症という病気になっただけ。友人としてすべきことは、認知症の障害を補いながら今までどおり友達のAさんと付き合い続ける」が重要と説いています。
まずはわたしたちが、認知症への理解を深めることが大切のようです。
[参考資料]
ライフネット生命保険株式会社『認知症に関するアンケート調査』